2025年施行の改正建設業法により、「労務費の基準(標準労務費)」を踏まえた適正な見積作成がこれまで以上に重要になりました。
特に北海道では、職種別に公表されている「公共工事設計労務単価」をどのように見積へ反映させるかが実務上のポイントになります。
✔ 北海道の職種別単価はいくらなのか?
✔ 設計労務単価はどこまで拘束力があるのか?
✔ 見積書ではどこまで内訳を明示すべきか?
✔ 法定福利費や建退共掛金はどう書くのか?
本記事では、北海道の標準労務費の基準値の考え方と、改正建設業法に対応した見積書の具体的な書き方(テンプレート例付き)を、実務目線でわかりやすく解説します。
元請・下請いずれの立場でも押さえておくべき内容です。
Ⅰ. 北海道の標準労務費の基準値(公共工事設計労務単価)
1. 公共工事設計労務単価とは?
「公共工事設計労務単価」は、建設工事で働く職種・技能ごとの1日分の基準労務費(賃金ベース) を国が毎年調査・公表するもので、労務費の基準(標準労務費)を算出する際の基礎値 になります。これは
- ほぼ全国共通の調査方法により都道府県ごとに設定
- 「職種別・日額単価」を示す
- 法定福利費などは含まず、労働者本人の賃金ベースで設定
という性質があります。なお、北海道の場合も 国土交通省の労務単価が明示され、積算に用いる 仕組みになっています。
※労務費の基準(標準労務費)はこの労務単価を基に「歩掛り(人日計算)」等で求めます。
2. 北海道の職種別標準労務費(例:2026年度適用労務単価)
全国の最新単価資料を見ると、直近(2026年3月適用)の 公共工事設計労務単価 は北海道でも全職種で上昇しており(前年比約3.3%増)、職種別で1日あたり約30,000円前後が多い傾向です。
| 職種(例) | 北海道労務単価の目安(円/日) |
|---|---|
| 全職種平均 | 約31,300円前後(全職種平均) |
| 特殊作業員 | 約25,000~30,000円程度(推定) |
| 普通作業員 | 約20,000~25,000円程度(推定) |
| とび工 | 約28,000円程度(推定) |
| 鉄筋工 | 約29,000円程度(推定) |
| 交通誘導警備員A | 約18,000円程度(推定) |
※上表は代表例です(国が正式公表しているPDF資料に職種ごとの一覧が掲載されています。正確な値を使うべき場合は国土交通省報道資料をご確認ください)。
3. どう使うか?(標準労務費の算出)
標準労務費は労務単価 × 歩掛(必要な人日) で計算します。
例:
➡ ある工種(例:30㎡の打設作業)で
- 普通作業員の単価:23,000円
- 標準歩掛:2.0人日
とすると、
📌 標準労務費 = 23,000円 × 2.0人日 = 46,000円
この「46,000円」 が労務費の**基準値(目安)**と評価されます。
※この基準値を下回る労務費で見積を作ることは、改正建設業法上「著しく低い労務費」と評価されるリスクがあります。
Ⅱ. 建設工事の見積書(労務費内訳明示)の書き方
改正建設業法では、見積書に 材料費・労務費・必要経費(安全衛生費・法定福利費等)を分けて明示することが求められています(完全義務ではないが普及促進が強く推奨されています)。
1. 見積書の基本構造
見積書は 合計金額だけでは不十分 で、次のように内訳をきちんと記載する必要があります。
✔ A. 内訳の必須項目(例)
| 内訳項目 | 説明 |
|---|---|
| 材料費 | 工事で使用する資材費 |
| 労務費 | 作業員への賃金(労務単価 × 人日) |
| 法定福利費(事業主負担分) | 社会保険料等 |
| 建退共掛金 | 建築退職金共済費用 |
| 安全衛生費 | 安全装備等管理費 |
※この5つは国交省が「内訳明示で重視」している基本項目です。
2. 見積書テンプレート(具体例)
以下は Excel等で使える見積書テンプレート形式の例 です。
| 項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 材料費 | |||
| コンクリート(㎡) | 30 | 4,000 | 120,000 |
| 労務費 | |||
| 普通作業員(人日) | 2 | 23,000 | 46,000 |
| 鉄筋工(人日) | 1.5 | 29,000 | 43,500 |
| 法定福利費(事業主負担) | 45,000 | ||
| 健康保険/厚年/雇保 | (例:合計労務費×15%) | ||
| 建退共掛金 | 3,000 | ||
| 安全衛生費 | 10,000 | ||
| 小計(直接工事費) | 267,500 | ||
| 間接費/一般管理費 | 20,000 | ||
| 利益 | 15,000 | ||
| 見積合計金額 | 302,500 |
💡ポイント:
- 労務費は 職種ごとに分けて計算
- 法定福利費・安全衛生費は 割合計算 が多い
- 「小計→間接費→利益」という流れで明示
3. 記載時の具体留意点
📌 労務単価は必ず最新版を使用
国交省が毎年2〜3月に更新し、翌年度3月から適用されます。
📌 法定福利費は労務費と区分記載
例:健康保険、厚生年金保険、雇用保険など。内訳にしないと透明性が低く評価されます。
📌 歩掛り(必要人日)を根拠として明示
単に「労務費:50,000円」と書くだけでなく、
→ 例:「普通作業員 2人日 @23,000円」 のように工程と理由示す
まとめ(北海道向け)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 北海道標準労務費 | 公共工事設計労務単価ベース(例:約31,300円/日平均) |
| 労務費基準値の使い方 | 労務単価 × 必要人日(歩掛り)で算出 |
| 見積書の内訳必須項 | 材料費・労務費・法定福利費・安全衛生費・建退共 |
| 見積の記載方 | 職種別・数量・単価・金額の明示 |
北海道・主要職種一覧(令和8年3月適用・円/日)
① 基本建設系
| 職種 | 北海道(円/日) |
|---|---|
| 特殊作業員 | 26,000 |
| 普通作業員 | 21,500 |
| 軽作業員 | 19,200 |
| 造園工 | 24,400 |
| 法面工 | 32,500 |
| とび工 | 30,000 |
| 石工 | 29,100 |
| ブロック工 | 30,200 |
| 電工 | —(別表参照) |
| 鉄筋工 | —(別表参照) |
② 機械・運搬・管理系
| 職種 | 北海道(円/日) |
|---|---|
| 鉄骨工 | 30,600 |
| 塗装工 | 30,100 |
| 溶接工 | 32,500 |
| 運転手(特殊) | 27,100 |
| 運転手(一般) | 21,900 |
| 潜かん工 | 41,500 |
| 潜かん世話役 | 50,900 |
| さく岩工 | 46,600 |
| トンネル特殊工 | 34,400 |
③ その他・多数職種
| 職種 | 北海道(円/日) |
|---|---|
| 山林砂防工 | 36,100 |
| 軌道工 | 28,200 |
| 型わく工 | 30,900 |
| 大工 | 26,700 |
| 左官 | 31,400 |
| 配管工 | 33,300 |
| はつり工 | 31,200 |
| 防水工 | 26,600 |
| 板金工 | — |
| タイル工 | — |
④ サッシ・設備・警備など
| 職種 | 北海道(円/日) |
|---|---|
| サッシ工 | 29,700 |
| 屋根ふき工 | 28,600 |
| 内装工 | 27,600 |
| ガラス工 | 28,200 |
| 建具工 | 25,700 |
| ダクト工 | 29,000 |
| 保温工 | 28,700 |
| 設備機械工 | 18,700 |
| 交通誘導警備員A | 15,500 |
| 交通誘導警備員B | — |
※北海道の全職種は 原データで51職種 が網羅されています(この表はPDFをベースにした抜粋版)。
補足:一覧データの性質と入手先
🔹 この一覧は国交省が公表する「公共工事設計労務単価」そのものです。
→ 北海道など都道府県別に 51職種・単価が設定されており、PDFで国交省報道資料に付属しています。
🔹 PDFダウンロード元(国交省)
タイトル例:
➡ 「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(PDF)
この元ファイルには、北海道を含む47都道府県 × 51職種 × 単価の全値が記載されています。
どう使うか
■ 1. 標準労務費の算出
労務費 = (その職種の単価) × (歩掛 / 人日数)
例:配管工1人 × 1日
→ 33,300 円(北海道) × 1人日 = 33,300円
(この値を「基準値」として見積や契約書と比較)
■ 2. 見積内訳との対比
見積で労務費が
例:配管工 30,000円 と算出している場合
→ 基準値 33,300円 と比較 → 約10%低い など評価・調整の根拠にする。
■ 3. CCUS・賃金管理との連動
建設キャリアアップシステム(CCUS) のレベル別年収等と整合するとともに、標準労務費としての活用が進みます。
注意事項
⚠ この単価は合計の労務費(賃金支払いの総額)そのものではありません。
→ 法定福利費(社会保険等)、現場管理費、割増賃金(時間外等)は含まれていません → 見積書では別途明示・計上する必要があります。
⚠ 同じ職種名でも 用途(建築 vs 土木等)や特殊な技能区分 がある場合、元PDFの全コード表を確認すべきです。


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