建設業のコミットメント条項とは?技能者の処遇改善を実現する新制度の内容を解説

コミットメント条項について解説する記事のアイキャッチ画像 改正建設業法

建設業界では現在、技能者の処遇改善や担い手確保を目的とした制度改革が大きく進められています。その中で、労務費の適正確保や建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用と並び、重要なキーワードとなっているのが「コミットメント条項」です。

これまでの制度では、企業が取り組みを「宣言」すること自体に意味がありましたが、近年はそれだけでは不十分とされ、「実際に実行しているかどうか」が問われる段階へと移行しています。コミットメント条項は、まさにその流れの中で導入された仕組みであり、企業が掲げた処遇改善の取り組みを、具体的な責任として明確化するものです。

特に、発注者から元請、元請から下請へと適正な労務費を確保し、最終的に現場で働く技能者に適正な賃金を行き渡らせるためには、「やると言ったことを本当にやる」ための仕組みが不可欠です。コミットメント条項は、その実効性を担保するための重要な制度と位置づけられています。

本記事では、国土交通省の資料をもとに、このコミットメント条項の制度内容について、具体的な仕組みや対象となる取り組み、企業に求められる対応まで、実務に即して詳しく解説していきます。

いま建設業界では、国と関係団体が主導して業界全体で賃金や労働者の処遇改善に乗り出しています。

この背景には、他産業と比べて年収が著しく低い建設業技能者の賃金を改善し、若手の人材確保を促進したいという強い願いがあるからです。このままでいくと、10年後にはいまの60代がごっそりと引退し、若手がいない現場で人手不足に陥り、国や地域の基盤が支えられなくなります。

それを回避するために建設業法などを改正し、これまでの業界の商慣習をも変え、抜本的なお金の流れすらも変えることでまずは一定のお給料をもらえる仕組みを作ろうとしています。それを図に表したのが以下です。

大きな柱としては、適正な賃金支払いの原資とすべき「労務費」を削ることなく下請まで行き渡らせることと、技能者の能力や経験に応じてお給料を上げられるようにする仕組みを作ることにあります。

そのための具体策が次の4つです。

取組1:労務費の内訳を見積もりに明示すること

取組2:技能者を大切にする企業が優先的に仕事で選ばれるようにすること

取組3:適正な労務費が下請まで行き渡るように注文者が確認できるようにすること

取組4:CCUSを活用し、能力レベルごとに年収を上げられるようにすること

今回の記事では、上記の4つの取組の内の3つ目となる「コミットメント条項」について詳しく説明いたします。

コミットメント条項の目的は以下の通りです。

🔵「労務費に関する基準」に基づき、個々の取引において適正な労務費が支払われ、技能者を雇用する事業者まで行き渡ることが重要
🔵 行政による監督指導を補完する仕組みとして、契約当事者間において、労務費や賃金の
支払いについて約束し、確認することを可能とするのが「コミットメント条項」である

まず簡単にかみ砕いて説明すると、

★技能者に適切な賃金を支払うためには、その原資となる「労務費」が発注者から元請、1次下請、2次下請と減額されることなく行き渡ってくることが前提となります。

ただし、現在の建設業界は資材の高騰や価格交渉でどうしても下請けは値段を上げることが出来ずにいます。その分を労務費で吸収し、下流に行くほど労務費は少なくなっていくわけです。

国はここにメスを入れようと、「適正労務費の設定」をし、行き渡っているかを監視するようにしていますが、もちろんそれだけで日本国中の取引を全て監視することはできませんよね。

そこで、契約当事者間で適正労務費の行き渡りと適正賃金の支払いの実現を相互監視する仕組みとして「受注者に発注者に適正労務費と適正賃金の支払いを約束」し、「注文者は受注者が約束通りに実行しているかを書類を出させて確認する」仕組みをコミットメント制度と言います。

これを単なる「口約束」だけでやるのではなく、「請負契約の条文」に盛り込んで「契約として実行させる」のがコミットメント条項です。

このコミットメント条項の設定の仕方は2つのパターンが用意されています。受注者は発注者に対してどちらかを任意に選択して契約します。

🔵全ての標準約款(公共・民間(甲・乙)・下請)に、「選択条項」として追加(契約当事者の任意で導入)
🔵コミットメント条項を導入する場合、以下の(A)(B)のパターンから選択

条項Aタイプ:上記の①②③の3つの内容を実行することを約束(コミット)する

条項Bタイプ:上記の①②のみの内容を実行することを約束(コミット)する

建設工事標準請負契約約款の改正(令和7年12月12日中央建設業審議会勧告)を受け、同日、民間(七会)連合協定工事請負契約約款が改正されました。

同約款においては、標準約款におけるコミットメント条項(B)を選択的条項ではなく既定の条項として追加されていますので、まずは共通事項として条項Bは実行されることになります。

以下に契約書の文案の載せておきます。

                コミットメント条項
(請負代金内訳書及び工程表)
第四条 受注者は、この契約を締結した後、速やかに請負代金内訳書及び工程表を発注者に、それぞれの写しを監理者に提出し、請負代金内訳書については、監理者の確認を受ける。
2 請負代金内訳書には、材料費、労務費、法定福利費(建設工事に従事する者の健康保険
料等の事業主負担額をいう。)、安全衛生経費(建設工事従事者の安全及び健康の確保の
推進に関する法律(平成二十八年法律第百十一号)第十条に規定する建設工事従事者の安
全及び健康の確保に関する経費をいう。)並びに建設業退職金共済契約(中小企業退職金
共済法(昭和三十四年法律第百六十号)第二条第五項に規定する特定業種退職金共済契約の
うち、建設業に係るものをいう。)に係る掛金を明示するものとする。


[注]「健康保険料等」とは、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金、雇用保険料及び労働者災害補償保険料をいう。

(適正な労務費の確保等)
第四条の二(A) 発注者及び受注者は、請負代金内訳書に明示される労務費が、労務費に関
する基準(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第三十四条第二項に基づき中央建設業審
議会が勧告する基準をいう。以下同じ。)を踏まえた適正な労務費であることを確認する。
 2 発注者は、前項の請負代金内訳書に明示された労務費を含む請負代金額を受注者に支払わなければならない。
 3 受注者は、次に掲げる事項を行わなければならない。
  一 適正な賃金をその雇用する技能者に支払うものとすること。
  二 労務費に関する基準を踏まえた適正な労務費を直接下請契約を締結する者(次号に  
    おいて「下請負人」という。)に支払うものとすること。
  三 下請負人との間で、次に掲げる事項を約する契約を締結すること。
    イ 下請負人が適正な賃金をその雇用する技能者に支払うこと。
    ロ 下請負人が労務費に関する基準を踏まえた適正な労務費を当該下請負人が直接
      下請契約を締結する者(ハにおいて「再下請負人」という。)に支払うこと。
    ハ 下請負人が、再下請負人との間で、建設工事標準下請契約約款第二条の二に定
      める事項を含む契約を締結すること。
    ニ 受注者からの求めに応じて、イ及びロの支払並びにハの契約を締結したことに
      関する書面を提出すること。
  4 発注者は、受注者に対して、適正な労務費の確保等のためその他必要があると認め
    られるときは、理由を付して、相当の期間を定めて、次に掲げる書面の提出を求め
    ることができる。
    一 前項第一号の支払に関する書面
    二 前項第二号の支払に関する書面
    三 前項第三号の契約を締結したことに関する書面

[注]第一号の書面としては、賃金を支払った旨の誓約書、第二号及び第三号の書面とし
ては、受注者と下請負人との間の下請契約の契約書の写しの該当部分などが該当する。
5 受注者は、前項の規定による請求があったときは、前項各号に掲げる書面を提出するも
のとする。
(適正な労務費の確保等)
第四条の二(B) 発注者及び受注者は、請負代金内訳書に明示される労務費が、労務費に関
する基準(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第三十四条第二項に基づき中央建設業審
議会が勧告する基準をいう。以下同じ。)を踏まえた適正な労務費であることを確認する。
2 発注者は、前項の請負代金内訳書に明示された労務費を含む請負代金額を受注者に支払
わなければならない。
3 受注者は、次に掲げる事項を行わなければならない。
 一 適正な賃金をその雇用する技能者に支払うものとすること。
 二 労務費に関する基準を踏まえた適正な労務費を直接下請契約を締結する者に支払うも
   のとすること。
4 発注者は、受注者に対して、適正な労務費の確保等のためその他必要があると認められ
るときは、理由を付して、相当の期間を定めて、次に掲げる書面の提出を求めることがで
きる。
 一 前項第一号の支払に関する書面
 二 前項第二号の支払に関する書面
[注]第一号の書面としては、賃金を支払った旨の誓約書、第二号の書面としては、受注者
と下請負人との間の下請契約の契約書の写しの該当部分などが該当する 。
5 受注者は、前項の規定による請求があったときは、前項各号に掲げる書面を提出するも
のとする。
[注]第四条の二は(A)又は(B)を使用し、使用しない場合は削除する。
※条項は民間約款の場合(公共約款、元下約款にも同様の規定を創設)
第四条について下線部のとおり改正予定

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