
外国人を採用する際、「同じような条件なのに、ビザがすぐ出る人と、2〜3ヶ月かかる人がいるのはなぜだろう?」と疑問に感じたことはないでしょうか。
実は、ビザ(在留資格)の審査は一律ではなく、「現地審査で完結するケース」と「本省経伺(本国照会)」に回るケースによって、審査期間が大きく変わります。
この記事では、審査スピードに差が出る理由を構造からわかりやすく解説し、「本省経伺とは何か」「なぜ審査が長引くのか」「企業としてできる対策」まで、実務レベルで詳しく解説します。
外国人ビザの審査期間はなぜ違うのか?構造から理解する
外国人を雇用する際、「同じように見える案件なのに、なぜかすぐ許可が出るケースと、2〜3ヶ月以上かかるケースがある」という現象は、実務上かなり頻繁に発生します。
結論から言うと、この差は偶然ではなく、入管側の審査の深さ・段階・リスク判断の違いによって意図的に生じています。
そしてこの違いを理解しないまま申請すると、
・採用スケジュールが崩れる
・入社時期が読めない
・最悪の場合、不許可になる
といった重大な経営リスクにつながります。
ここではまず、「なぜ期間に差が出るのか」を構造的に解説していきます。
審査期間に差が出る最大の理由は「リスク評価」
入管の審査は単なる書類チェックではなく、「この外国人を日本で働かせて問題ないか」というリスク審査です。
そのため、以下の3つの観点で総合的に判断されています。
① 企業の信用力
- 上場企業・大企業 → 信用が高く審査が簡略化されやすい
- 中小企業・新設法人 → 詳細な審査対象になりやすい
特に「初めて外国人を雇用する会社」は、
・本当に事業があるのか
・雇用の実態はあるのか
・偽装就労ではないか
といった点を細かく見られるため、審査が重くなります。
② 業務内容と在留資格の適合性
ここが最も重要です。
例えば:
- 「技術・人文知識・国際業務」で単純作業をさせる → 不適合
- 「特定技能」で専門職をやらせる → 不適合
このように、業務内容とビザの整合性が曖昧な場合は審査が長引く傾向があります。
逆に、
- ITエンジニア × IT企業
- 通訳 × 国際業務
のように分かりやすい場合は、スムーズに進みます。
③ 外国人本人の経歴・属性
- 学歴と職務内容が一致しているか
- 職歴に不自然な点がないか
- 過去に不法滞在歴がないか
これらに問題がなければ早いですが、少しでも疑問があると調査が入り、時間が延びます。
「すぐ許可が出るケース」と「時間がかかるケース」の違い
実務的に分けると、以下のようになります。
■ 早いケース(1〜4週間程度)
- 在留資格の更新(すでに日本にいる)
- 転職だが同種業務で問題がない
- 大企業・上場企業
- 過去に同様の許可実績がある企業
- 書類が完全で疑義がない
つまり一言でいうと、
👉 「入管が過去に判断したことがある安心パターン」
■ 遅いケース(2〜3ヶ月以上)
- 海外からの新規招聘(認定申請)
- 初めて外国人を雇う会社
- 新規事業・スタートアップ
- 業務内容が曖昧・複雑
- 書類不備・追加資料あり
こちらは
👉 「入管が慎重に判断しないといけない案件」
です。
「現地対応」と「本省経伺」とは何か
この審査スピードの違いを決定づけるのが、
「どこで審査が完結するか」です。
現地対応とは
「現地対応」とは、外国人の本人がいるその国の日本領事館などが直接判断を下すパターンです。国内であれば、地方出入国在留管理局(いわゆる入管)がその場で判断して完結する審査を意味します。
特徴
- 一般的な案件
- 過去に類似事例がある
- 判断基準が明確
この場合、審査はスムーズで、比較的短期間で結果が出ます。
本省経伺とは
一方で「本省経伺(ほんしょうけいし)」とは、
現地の領事館や地方入管だけでは判断できず、東京の本省(法務省)に判断を仰ぐ手続きです。
どんなときに本省経伺になるか
- 新しいビジネスモデル
- 在留資格との適合性が微妙
- 国として慎重に扱うべき案件
- 過去にトラブルの多い分野
- 特定技能・高度人材など政策的要素が強い案件
つまり、
👉 「前例がない or 判断が難しい案件」
は本省送りになります。
なぜ本省経伺は時間がかかるのか
理由はシンプルですが重要です。
- 書類が東京に回る(物理的時間)
- 審査が二段階になる
- 担当部署が増える
- 追加照会が発生しやすい
結果として、
👉 2〜3ヶ月、場合によってはそれ以上
かかることになります。
ビザ発給を早めるための実務的対策
ここからが一番重要なポイントです。
審査期間は完全にコントロールできるわけではありませんが、短縮するための打ち手は明確に存在します。
① 理由書の質で勝負が決まる
入管審査で最も重要なのは
👉 「なぜこの外国人なのか」
これを論理的に説明することです。
悪い例:
- 「人手不足のため」
→ 抽象的すぎてNG
良い例:
- 「〇〇業務において、日本人では対応困難な△△スキルを有しているため」
このレベルまで具体化することで、
👉 本省経伺に行く確率を下げられます
② 書類不備をゼロにする
入管は「疑問があれば止める」スタンスです。
つまり
- 不備 → ストップ
- 追加資料 → 再審査
となり、簡単に1ヶ月延びます。
特に重要なのは:
- 雇用契約書
- 業務内容説明書
- 学歴証明
- 会社資料
ここは絶対に手を抜いてはいけません。
③ 初めての外国人雇用は特に慎重に設計する
初回は確実に審査が重くなります。
そのため
- 事業内容を明確化
- 業務内容を細分化
- 組織体制を説明
など、「会社の信頼性を証明する資料作り」が重要です。
④ 専門家(行政書士)の活用
正直に言うと、ここは大きな差が出ます。
理由:
- 入管の審査ポイントを理解している
- 本省案件になるラインを把握している
- 理由書の質が圧倒的に違う
結果として
👉 審査期間の短縮+許可率の向上
につながります。
⑤ スケジュール設計を間違えない
実務で一番多いミスがこれです。
- 「1ヶ月で来ると思った」→ 来ない
- 「採用日を先に決めた」→ 間に合わない
対策はシンプルで
👉 最低でも3ヶ月を前提に動くこと
これが現実的なラインです。
最後に:ビザは「早さ」より「確実性」
外国人雇用において重要なのは、
単に早く許可を取ることではありません。
- 不許可にならないこと
- 再申請にならないこと
- 適法に雇用できること
これが最優先です。
そしてそのためには、
👉 「入管に疑問を持たせない申請」
を最初から作ることがすべてです。
まとめ
- 審査期間の差は「リスク評価」と「審査段階」の違い
- 現地対応は早く、本省経伺は遅い
- 本省案件は2〜3ヶ月以上かかる
- 期間短縮の鍵は「理由書」と「書類の完成度」
- 最低でも3ヶ月前提で採用計画を立てるべき


