相続が発生したとき、遺産の分け方をめぐって相続人同士が対立してしまうケースがあります。いわゆる「遺産分割トラブル」です。
実際、家庭裁判所では毎年多くの遺産分割調停が行われており、相続トラブルは決して珍しいものではありません。しかし、すべての家庭で同じようにトラブルが起きるわけではなく、遺産分割で揉めやすい家庭には一定の共通点があります。
例えば、次のようなケースです。
- 相続人同士の関係があまり良くない
- 相続財産の多くが不動産である
- 親の介護を特定の子どもが担っていた
- 生前贈与が行われていた
- 遺言書が作成されていない
このような条件が重なると、遺産分割の話し合いがまとまらず、相続トラブルに発展する可能性が高くなります。
この記事では、遺産分割で揉めやすい家庭の特徴を具体的に解説し、相続トラブルを防ぐためのポイントについても分かりやすく紹介します。
- 遺産分割トラブルはどのくらい起きているのか
- 相続トラブルは資産家だけの問題ではない
- 遺産分割トラブルが起きる典型的な流れ
- 相続トラブルの多くは「事前対策」で防げる
- 遺産分割で揉めやすい家庭の特徴
- トラブルの原因は「お金」だけではない
- 相続トラブルの構造
- 相続は「感情」が強く影響する
- トラブルを防ぐポイント
- 不動産は物理的に分けることが難しい
- 不動産を分ける方法
- 共有相続はトラブルの原因になりやすい
- 不動産がある相続で重要なポイント
- 親の介護負担が偏っている家庭
- 生前贈与がある家庭
- 遺言書がない家庭
- 相続財産の内容が不明確な家庭
- 遺産分割トラブルを防ぐための対策
- 相続手続きは専門家に相談するのも一つの方法
- 早めの相談がトラブル防止につながる
遺産分割トラブルはどのくらい起きているのか
相続が発生すると、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人で分ける「遺産分割」が必要になります。多くの家庭では円満に手続きが進みますが、実際には遺産分割をめぐって相続人同士が対立するケースも少なくありません。
特に近年は、家庭裁判所で取り扱われる遺産分割調停の件数が高い水準で推移しており、相続トラブルは決して珍しい問題ではないと言われています。
家庭裁判所の司法統計によると、毎年多くの遺産分割事件が申し立てられています。
遺産分割事件の件数(参考)
| 年 | 遺産分割事件件数 |
|---|---|
| 約1万件前後 | 毎年継続的に発生 |
つまり、毎年1万件以上の相続トラブルが裁判所で扱われているということになります。
さらに重要なのは、裁判所に持ち込まれているケースはトラブルの一部に過ぎないという点です。実際には、家族内で対立が起きていても裁判所に行かずに関係が悪化しているケースも多く存在します。
相続トラブルは資産家だけの問題ではない
相続トラブルというと、「資産家の家で起きる問題」と思われがちです。しかし実際には、遺産総額がそれほど多くない家庭でもトラブルは発生します。
むしろ遺産額が少ない場合は、次のような理由からトラブルになりやすいと言われています。
相続トラブルが起きやすい理由
- 財産の大半が不動産で分けにくい
- 現金が少なく公平に分配できない
- 感情的な対立が生まれやすい
- 「公平感」を巡る争いが起きる
たとえば次のようなケースです。
相続財産
・実家(土地+建物)2000万円
・預金100万円
この場合、相続人が3人いたとしても
家を物理的に3つに分けることはできません。
そのため
- 誰が家を相続するのか
- 他の相続人への補償はどうするのか
という問題が生じます。
遺産分割トラブルが起きる典型的な流れ
遺産分割トラブルは、次のような流れで発生することが多いです。
被相続人が死亡
↓
相続人が確定
↓
相続財産を調査
↓
遺産分割協議
↓
意見が対立
↓
話し合いがまとまらない
↓
家庭裁判所に調停申立て
このように、最初は話し合いで解決しようとしても、意見が対立すると調停や審判へ進むことになります。
相続トラブルの多くは「事前対策」で防げる
遺産分割トラブルの多くは、実は次のような事前対策によって防ぐことができます。
- 遺言書を作成しておく
- 財産を整理しておく
- 相続人同士で話し合っておく
- 不動産の分割方法を考えておく
つまり、相続トラブルの多くは突然起きるものではなく、原因が積み重なって発生するものです。
そのため、まずは「どのような家庭でトラブルが起きやすいのか」を理解しておくことが重要です。
次の章では、遺産分割で揉めやすい家庭の特徴について詳しく解説します。
遺産分割で揉めやすい家庭の特徴
遺産分割トラブルは、どの家庭でも起こり得る問題ですが、実際には揉めやすい家庭には共通する特徴があります。
これらの特徴が複数重なると、相続人同士の意見が対立しやすくなり、遺産分割協議がまとまらなくなる可能性が高くなります。
特に多いのが次のようなケースです。
遺産分割で揉めやすい家庭
- 相続人同士の関係が良くない
- 財産の多くが不動産
- 親の介護負担が偏っている
- 生前贈与がある
- 遺言書がない
- 財産内容が不明確
これらは単独でもトラブルの原因になりますが、複数重なると相続トラブルのリスクが大きく高まります。
トラブルの原因は「お金」だけではない
遺産分割トラブルというと、財産の金額が問題になると思われがちですが、実際には感情的な対立が原因になるケースも多くあります。
例えば次のようなケースです。
- 兄弟間で昔から関係が悪い
- 親の介護負担が偏っている
- 親から特定の子どもだけ支援を受けていた
このような状況では、相続の話し合いが過去の不満をぶつける場になってしまうことがあります。
相続トラブルの構造
遺産分割トラブルは、次のような構造で起きることが多いです。
財産の分け方の問題
+
感情的対立
+
公平感の問題
↓
相続トラブル
つまり、単なるお金の問題ではなく、家族関係の問題が絡むことが多いという点が特徴です。
次の章からは、遺産分割で揉めやすい家庭の具体的な特徴について詳しく解説します。
相続人同士の関係が良くない家庭
遺産分割トラブルの最も大きな原因の一つが、相続人同士の人間関係です。
兄弟姉妹の関係が良好であれば、多少意見が異なっても話し合いによって解決できることが多いでしょう。しかし、もともと関係が悪い場合は、相続をきっかけに対立が激化することがあります。
兄弟姉妹の関係が悪いケース
特に次のような場合は、遺産分割トラブルが起きやすい傾向があります。
- 長年連絡を取っていない
- 過去に金銭トラブルがあった
- 親の対応に不公平感がある
- 兄弟間で性格が合わない
こうした状況では、遺産分割の話し合いが始まった段階で対立が起きる可能性があります。
相続は「感情」が強く影響する
相続では、金額以上に感情的な問題が影響することがあります。
例えば
- 「兄だけ優遇されていた」
- 「親の面倒を見ていないのに財産をもらうのは納得できない」
といった不満が出るケースです。
トラブルを防ぐポイント
このようなトラブルを防ぐためには
- 遺言書の作成
- 生前の説明
- 財産の整理
などの対策が重要になります。
不動産が相続財産の大部分を占める家庭
遺産分割トラブルの原因として非常に多いのが、相続財産の大部分が不動産であるケースです。特に日本では、相続財産の中で不動産が占める割合が高い家庭が多く、実家の土地や建物が遺産の中心になっていることがよくあります。
不動産は現金のように自由に分割できるものではないため、誰がどのように取得するのかをめぐって相続人の意見が対立することがあります。
不動産は物理的に分けることが難しい
遺産分割では、相続人の間で公平に財産を分けることが基本になります。しかし、不動産の場合は物理的に分割することが難しいため、問題が生じやすくなります。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
相続財産の例
| 財産 | 評価額 |
|---|---|
| 実家(土地+建物) | 2000万円 |
| 預金 | 100万円 |
相続人が3人いる場合、本来であれば公平に分ける必要があります。しかし、実家を3つに分けることはできません。
そのため次のような問題が発生します。
- 誰が実家を相続するのか
- 他の相続人にどのように補償するのか
- 売却するのかどうか
このような点について意見が分かれると、遺産分割協議がまとまらなくなる可能性があります。
不動産を分ける方法
不動産を相続する場合、一般的には次の4つの方法があります。
不動産分割の方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 不動産をそのまま相続する |
| 換価分割 | 不動産を売却して現金で分ける |
| 代償分割 | 不動産を取得する人が他の相続人にお金を支払う |
| 共有分割 | 相続人全員で共有する |
それぞれにメリットとデメリットがあります。
共有相続はトラブルの原因になりやすい
話し合いがまとまらない場合、暫定的に不動産を共有名義にするケースもあります。しかし、不動産の共有は将来的なトラブルの原因になることが多いです。
例えば、次のような問題が発生することがあります。
- 売却する際に全員の同意が必要
- 修繕費用の負担で揉める
- 次の世代に相続されて権利関係が複雑になる
このような問題があるため、不動産の共有はできるだけ避けた方が良いと言われています。
不動産がある相続で重要なポイント
不動産が相続財産の中心になる場合は、次の点を事前に考えておくことが重要です。
- 誰が住むのか
- 売却するのか
- 賃貸として活用するのか
- 他の相続人への補償方法
こうした点を事前に整理しておくことで、相続トラブルを防ぐことができます。
親の介護負担が偏っている家庭
遺産分割トラブルの原因としてよく見られるのが、親の介護をめぐる不公平感です。
特に近年は高齢化が進み、子どもが親の介護を担うケースも多くなっています。その中で、特定の子どもだけが長期間介護を行っていた場合、相続の場面で不満が生じることがあります。
よくある相続トラブルのケース
例えば次のようなケースです。
長男
・親と同居
・10年間介護次男
・遠方に住んでいる
・介護はしていない
この場合、法律上の相続分は原則として同じになります。しかし、長男としては次のように感じることがあります。
- 自分が介護をしてきたのに不公平
- 何もしていない兄弟と同じ相続は納得できない
このような不満が遺産分割トラブルにつながることがあります。
寄与分という制度
このような場合に考慮される制度として寄与分があります。
寄与分とは、相続人が被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合に、その貢献を相続分に反映する制度です。
例えば次のようなケースが該当します。
- 長期間の介護
- 家業の手伝い
- 生活費の援助
ただし、寄与分が認められるためには一定の条件があり、実際に認められるケースはそれほど多くありません。
介護問題が相続トラブルになる理由
介護問題が相続トラブルになる理由は、主に次の3つです。
介護トラブルの原因
- 介護の負担が偏っている
- 感謝や補償がない
- 相続時に不公平感が生じる
このような問題がある場合、相続の話し合いが感情的な対立に発展する可能性があります。
生前贈与がある家庭
相続トラブルの原因として多いのが、生前贈与に対する不公平感です。
生前贈与とは、被相続人が生きている間に財産を子どもなどに贈与することをいいます。例えば次のようなケースです。
- 住宅購入資金の援助
- 結婚資金の援助
- 学費の支援
- 事業資金の援助
このような援助が特定の子どもだけに行われていた場合、相続の場面で不満が生じることがあります。
特別受益という考え方
民法では、生前贈与の一部については特別受益として扱われることがあります。
特別受益とは、相続人が被相続人から特別に受けた利益のことです。
例えば次のようなものです。
- 住宅購入資金
- 多額の贈与
- 結婚資金
このような贈与があった場合、遺産分割の際に考慮されることがあります。
トラブルの原因
生前贈与は次のような問題を生みやすいです。
- 贈与額が不明確
- 証拠が残っていない
- 相続人が納得しない
このため、相続トラブルの原因になることがあります。
遺言書がない家庭
遺産分割トラブルの大きな原因の一つが、遺言書が作成されていないケースです。遺言書がない場合、相続財産は原則として相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって分けることになります。
しかし、相続人の意見が一致しない場合、遺産分割協議はまとまらず、相続トラブルに発展する可能性があります。
遺言書がない場合の相続の流れ
遺言書がない場合、相続は次のような流れで進みます。
被相続人が死亡
↓
相続人の確定
↓
相続財産の調査
↓
遺産分割協議
↓
全員の合意
↓
遺産分割協議書作成
この流れの中で最も重要なのが遺産分割協議です。
遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きです。
重要なポイントは次の点です。
遺産分割協議のポイント
- 相続人全員の合意が必要
- 一人でも反対すると成立しない
- 合意内容を書面化する必要がある
つまり、相続人の一人でも納得しない場合、遺産分割は成立しないということになります。
遺言書がある場合との違い
遺言書がある場合、基本的には遺言の内容に従って相続が行われます。
そのため、遺産分割協議を行う必要がない場合もあります。
遺言書の有無による違い
| 項目 | 遺言書なし | 遺言書あり |
|---|---|---|
| 財産の分け方 | 相続人の話し合い | 遺言内容 |
| トラブル | 起きやすい | 起きにくい |
| 手続き | 協議が必要 | 協議不要の場合あり |
もちろん遺言書があってもトラブルになることはありますが、遺言書があることでトラブルを大きく減らすことができるといわれています。
遺言書がないとトラブルになる典型例
遺言書がない場合、次のようなケースでトラブルが発生しやすくなります。
- 不動産を誰が相続するか決まらない
- 相続人の意見が対立する
- 特定の相続人が財産を多く主張する
- 相続人同士の関係が悪い
特に不動産がある相続では、遺言書がないことでトラブルが起きるケースが非常に多く見られます。
遺言書が重要な理由
遺言書には、次のようなメリットがあります。
遺言書のメリット
- 財産の分け方を指定できる
- 相続トラブルを防げる
- 相続手続きがスムーズになる
- 相続人の負担を減らせる
このような理由から、近年では相続対策として遺言書を作成する人が増えています。
相続財産の内容が不明確な家庭
遺産分割トラブルの原因として意外と多いのが、相続財産の内容がはっきりしていないケースです。
相続が発生した際には、まず亡くなった人の財産をすべて把握する必要があります。しかし、実際には財産の全体像が分からないことも少なくありません。
相続財産の調査が必要になる理由
遺産分割を行うためには、次のような財産をすべて確認する必要があります。
相続財産の例
- 預貯金
- 不動産
- 株式
- 投資信託
- 自動車
- 貴金属
- 借金
これらの財産を正確に把握しないと、適切な遺産分割ができません。
よくあるトラブル
財産の内容が不明確な場合、次のような問題が発生することがあります。
財産調査のトラブル
- 隠し口座が見つかる
- 借金が後から判明する
- 相続人が財産を把握していない
- 特定の相続人だけが情報を持っている
このような状況では、相続人同士の信頼関係が崩れ、トラブルに発展することがあります。
財産調査の流れ
相続財産を調査する際には、次のような手順で確認していきます。
遺品整理
↓
通帳・契約書の確認
↓
金融機関調査
↓
不動産調査
↓
財産目録作成
このようにして財産の全体像を把握することが重要です。
遺産分割トラブルを防ぐための対策
遺産分割トラブルは、事前の対策によって防ぐことができる場合が多くあります。
相続が発生してから対応するのではなく、生前から準備をしておくことでトラブルを回避することができます。
主な相続対策
相続トラブルを防ぐための主な対策として、次のようなものがあります。
相続対策の例
- 遺言書の作成
- 財産の整理
- 相続人への説明
- 不動産の分割方法の検討
これらの対策を行うことで、遺産分割の際の混乱を防ぐことができます。
遺言書の作成
最も効果的な相続対策の一つが、遺言書の作成です。
遺言書があれば、財産の分け方を明確にすることができ、相続人同士の争いを防ぐことができます。
特に次のような場合には遺言書の作成が重要です。
- 不動産がある
- 相続人の人数が多い
- 再婚している
- 子どもがいない
財産の整理
相続トラブルを防ぐためには、財産の内容を整理しておくことも重要です。
例えば次のような情報をまとめておくと、相続手続きがスムーズになります。
整理しておくべき情報
- 預金口座
- 不動産
- 保険
- 借金
こうした情報を整理しておくことで、相続人が財産調査で苦労することを防ぐことができます。
相続手続きは専門家に相談するのも一つの方法
相続手続きは、法律や手続きが複雑なため、専門家に相談することでスムーズに進められる場合があります。
特に次のようなケースでは、専門家のサポートが有効です。
専門家に相談した方がよいケース
- 相続人が多い
- 不動産がある
- 相続人同士の関係が良くない
- 財産の内容が複雑
このような場合、専門家が間に入ることで手続きを円滑に進めることができます。
行政書士が対応できる相続手続き
行政書士は、相続に関する書類作成や手続きをサポートすることができます。
ただし、「争いのない相続」であることが大前提となります。
なぜか?争いのある場合には、法的な解決が必要になってくるため「弁護士」しか対応することが出来ません。
ですので、争いのない相続であれば行政書士が受任いたします。
例えば行政書士が請け負う業務には、次のような業務があります。
行政書士の主な業務
- 遺産分割協議書作成
- 相続関係説明図作成
- 戸籍収集
- 相続手続きサポート
これらの手続きを専門家に依頼することで、相続人の負担を減らすことができます。
早めの相談がトラブル防止につながる
相続トラブルは、問題が大きくなってから対応すると解決が難しくなることがあります。
そのため
- 相続が発生したとき
- 相続トラブルの兆しがあるとき
などの段階で専門家に相談することが重要です。
早めに対応することで、円満な遺産分割につながる可能性が高くなります。

