特定事業所加算の負担を減らす|人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)の活用方法

障がい福祉の居宅介護で特定事業所加算の取得申請における 研修費の補助金について解説する記事のアイキャッチ画像 福祉施設(障がい・児童)

特定事業所加算取得のための
研修費用軽減に活用できる助成金制度

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)は令和6年3月31日をもって廃止されました。
これまで多くの介護事業所様で活用されてきた同コースですが、現在は申請することができません。
本資料では、特定事業所加算の取得に必要な研修費用の軽減に活用できる、現在利用可能な代替助成金制度2つを整理いたします。

障がい福祉サービスの居宅介護事業において特定事業所加算を取得するためには、計画的な研修の実施や人材育成体制の整備が必須要件となります。これらの体制整備にかかるコストを軽減するため、以下の2つの助成金制度の活用が可能なようです。

  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース):研修制度等の社内制度導入を助成
  • 人材開発支援助成金(人材育成支援コース):実際の研修受講費用と賃金を助成

1.1 制度概要

本コースは、令和4年度から休止していましたが、令和7年4月1日より整備計画の新規受付を再開しました(人事評価改善等助成コースと統合)。
事業主が雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)または業務負担軽減機器等を導入し、従業員の離職率低下に取り組む場合に助成されます。

特定事業所加算との関連性
特定事業所加算の要件である研修体制の整備と連動させることが可能です。
例えば、「健康づくり制度(定期健康診断やストレスチェック等)」や「職場活性化制度(メンター制度等)」を導入することで、加算要件を満たしつつ助成金の対象とすることができます。

1.2 助成額

区分通常助成額賃金要件達成時
(5%以上賃上げ)
雇用管理制度の導入
・賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度1制度につき40万円1制度につき50万円
・職場活性化制度、健康づくり制度1制度につき20万円1制度につき25万円
複数制度導入時の上限額80万円100万円
業務負担軽減機器等の導入
介護福祉機器等の導入経費経費の1/2
(上限150万円)
経費の62.5/100
(上限187.5万円)

1.3 受給要件

  1. 雇用管理制度等整備計画の作成・提出
    管轄の労働局へ計画を提出し、認定を受けること。
  2. 制度の導入・実施
    認定された計画に基づき、雇用管理制度または業務負担軽減機器等を導入し、全ての対象労働者に適用して実施すること。
  3. 離職率の低下目標の達成
    計画期間終了後1年間の離職率を、計画提出前1年間の離職率と比較して低下させること。
    • 雇用保険一般被保険者数 10人以上:目標値以上に低下させること
    • 雇用保険一般被保険者数 9人以下:離職率が上回らないこと(現状維持でも可)

1.4 申請手順

1. 雇用管理制度等整備計画の作成

2. 計画期間開始1か月前(遅くとも)までに管轄労働局へ提出・認定申請

3. 計画期間内(通常6~12か月)に雇用管理制度を導入・実施

4. 計画期間終了後1年間の離職率(評価時離職率)を算定・確認

5. 評価時離職率算定期間末日から2か月以内に支給申請

⚠️ 注意点

  • 計画届提出前に制度を導入してしまうと受給不可となります(後付け申請は一切不可)。
  • 離職率目標を達成できなかった場合は支給されません(結果責任型)。
  • 制度は「一部の労働者」ではなく「全対象労働者」に適用する必要があります。
  • 同一事業所での通算受給上限額は300万円です。
  • 最短でも支給申請まで約2年かかります(計画期間1年 + 評価期間1年)。

1.6 難易度評価

★★★☆☆ (中程度)
計画届の事前提出が必須であり、離職率目標の達成という結果責任が伴います。また、支給まで長期間を要します。ただし、制度内容自体は比較的シンプルであり、専門家のサポートがあれば十分に取り組める内容です。

2.1 制度概要

前回の記事でご紹介をした助成金制度です。
事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識・技能習得のための職業訓練(OFF-JT)を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
令和7年4月1日から申請様式が大幅に簡素化され、計画届の確認・審査が廃止(受付のみとなり、審査は支給申請時に一括実施)されました。特定事業所加算取得に必要な各種外部研修が対象となります。

2.2 助成内容(中小企業の場合)

助成項目正規雇用労働者有期契約労働者等賃金要件達成時
(5%以上賃上げ)
経費助成
(受講料等の訓練経費)
45%70%それぞれ +15%ポイント
賃金助成
(1時間あたり)
800円800円+200円(計1,000円)
OJT実施助成
(1人1訓練あたり)
20万円+5万円(計25万円)
  • 1事業所1年度あたりの支給限度額:原則1,000万円
  • 賃金助成の支給限度時間:1人1訓練あたり1,200時間(専門実践教育訓練は1,600時間)

2.3 対象となる訓練

OFF-JTによる訓練(10時間以上) ※通信制・eラーニングも可

  • 外部の研修機関による研修(オンライン研修含む)
  • 介護福祉士実務者研修、介護職員初任者研修等の資格取得研修
  • 喀痰吸引等研修、強度行動障害支援者養成研修
  • サービス提供責任者向けの専門研修、マネジメント研修
  • 特定事業所加算の個別研修計画に基づく外部研修受講

2.4 申請手順

1. 事業内職業能力開発計画の作成

2. 訓練開始日の6か月前から1か月前までに「職業訓練実施計画届」を提出(令和7年度から受付のみ)

3. 計画に沿って訓練を実施

4. 訓練終了日の翌日から2か月以内に管轄労働局へ支給申請

⚠️ 注意点

  • 計画届が受理されても支給確定ではありません(審査は支給申請時に行われます)。
  • 同一の訓練経費・賃金に対して他の助成金との重複申請は不可です(併給調整)。
  • 訓練受講時間が実訓練時間数の8割以上出席している必要があります。
  • 訓練内容は「職務に関連」していることが必須です。
  • 助成金は後払い(訓練終了後の申請・審査を経て支給)となります。

2.6 難易度評価

★★☆☆☆ (やや低め)
令和7年度からの手続き簡素化により取り組みやすくなりました。離職率等の結果要件がなく、比較的短期間(訓練終了後2~3か月)で受給可能です。

項目人材確保等支援助成金
(雇用管理制度)
人材開発支援助成金
(人材育成支援)
制度目的雇用管理制度の導入による職場定着職業訓練実施による人材育成
助成対象制度導入費用、機器導入費用研修受講経費、訓練中の賃金
助成額(概算)20~100万円(複数制度で上限)訓練経費の45~85% + 賃金助成
結果責任あり(離職率低下が必須)なし(訓練実施が要件)
支給までの期間約2年(計画期間+評価期間)訓練終了後2~3か月
特定事業所加算
との関連
研修制度の社内整備を評価実際の研修実施費用を助成
難易度★★★☆☆★★☆☆☆

4.1 併用の基本原則

  • 2つの助成金は目的・仕組みが異なるため、原則として併用可能です。
  • ただし、同一の経費・賃金・訓練実施に対して重複申請することは不可(併給調整)です。
  • 例:ある外部研修の受講費用を「人材開発支援助成金」で申請した場合、全く同じ費用を「人材確保等支援助成金」の経費として計上することはできません。

4.2 推奨される組み合わせ戦略

【戦略A】費用の適切な振り分けによる併用

  1. 人材開発支援助成金:外部研修の受講費用(研修機関への支払い)と訓練期間中の賃金を申請
  2. 人材確保等支援助成金:研修制度の社内整備費用(制度設計、就業規則改定、コンサルティング費用等)を申請

→ 異なる費用項目であるため、重複に当たらず併用可能です。

【戦略B】特定事業所加算取得に向けた最適活用順序

  1. 第1段階(短期)人材開発支援助成金で外部研修を実施
    • 介護福祉士実務者研修、初任者研修等の資格取得支援
    • サービス提供責任者向けの専門研修、特定事業所加算に必要な個別研修の実施
    • → 訓練終了後2~3か月で助成金受給
  2. 第2段階(長期)人材確保等支援助成金で研修制度を整備
    • 個別研修計画制度の導入、メンター制度(職場活性化制度)の導入
    • 健康づくり制度(ストレスチェック、健康相談等)の導入
    • → 制度導入・運用を経て、離職率低下を達成後に助成金受給(約2年後)
  3. 結果両助成金を活用しながら、特定事業所加算の要件(研修体制、人材配置、離職率低下)を段階的に満たすことが可能です。

5.1 特定事業所加算の主要要件(居宅介護の場合)

  • 体制要件:計画的な研修の実施、会議の定期的な開催、文書による指示・報告体制、定期健康診断の実施、緊急時対応方法の明示
  • 人材要件:サービス提供責任者の資格・経験要件、介護福祉士等の配置割合
  • 重度者対応要件:重度障害児への支援実績

5.2 助成金活用による要件充足のイメージ

特定事業所加算の要件活用できる助成金具体的な取り組み例
計画的な研修の実施人材開発支援助成金個別研修計画に基づく外部研修受講費用を助成
研修制度の整備人材確保等支援助成金個別研修計画制度、メンター制度の導入費用を助成
職場定着・離職率低下人材確保等支援助成金雇用管理制度導入により離職率低下を実現
健康管理体制人材確保等支援助成金健康づくり制度(定期健康診断等)の導入を助成

6.1 申請の基本要件

  • 雇用保険適用事業所であること
  • 社会保険料・労働保険料を滞納していないこと
  • 過去に助成金の不正受給をしていないこと
  • 労働関係法令に違反していないこと(残業代未払い等がないこと)
  • 各種申請期限を厳守すること

6.2 必要書類(一般的なもの)

  • 事業内職業能力開発計画書(人材開発支援助成金)
  • 雇用管理制度等整備計画書(人材確保等支援助成金)
  • 就業規則、賃金規定(労働基準監督署の受付印があるもの)
  • 雇用保険被保険者台帳、労働者名簿
  • 出勤簿、賃金台帳
  • 研修実施を証明する書類(受講証明書、カリキュラム、出席簿等)
  • 経費の支払いを証明する書類(領収書、振込明細等)

7.1 介護福祉機器助成コース廃止への対応

人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)が廃止された現在、研修費用の軽減には本記事でご案内した2つの助成金が最も現実的な選択肢となります。特に、特定事業所加算の取得を目指される事業者様にとっては、研修実施(人材開発支援助成金)と制度整備(人材確保等支援助成金)の両面から支援を受けられる体制を整えることが重要です。

7.2 段階的なスケジュール提案

【短期(6か月~1年)】

  • 人材開発支援助成金の計画届提出
  • 特定事業所加算に必要な外部研修の実施(介護福祉士実務者研修、初任者研修等)
  • 研修費用の助成金申請・受給

【中期(1~2年)】

  • 人材確保等支援助成金の計画届提出
  • 研修制度、メンター制度等の社内制度導入
  • 特定事業所加算の申請準備・取得

【長期(2~3年)】

  • 離職率低下目標の達成確認
  • 人材確保等支援助成金の支給申請・受給

7.3 専門家との連携

助成金の申請代行は社会保険労務士の専門業務です。当事務所では、信頼できる社会保険労務士と連携し、特定事業所加算の取得(行政書士)から助成金申請(社労使)までをワンストップでサポートする体制を整えております。複雑な要件確認や書類作成についてもお気軽にご相談ください。

【ご留意事項】
本記事は令和7年度(2025年度)の制度内容に基づいて作成しております。助成金制度は年度ごとに変更される場合がありますので、申請前に必ず最新の情報をご確認ください。また、実際の事案については、信頼のおける情報の確認をされ、管轄の労働局または専門家(社会保険労務士等)にご相談されることをお勧めいたします。

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