建設業者が必ず確認すべき産廃許可の人的要件|欠格要件と建設業法違反の影響

産廃許可の人的要件について解説する記事のアイキャッチ画像 産業廃棄物収集運搬

産廃許可申請において、最も慎重に確認すべきなのが「人的要件」です。

建設業者の方は、
「会社の財務が問題なければ大丈夫ですよね?」
「講習を受ければ許可は取れますよね?」
という不安や疑問が多いのではないでしょうか。

しかし、産業廃棄物収集運搬業許可では、役員全員が欠格要件に該当しないことが絶対条件です。これは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく厳格な規定です。

特に建設業者の場合、注意すべきなのが「過去の建設業法違反」との関係です。営業停止処分や許可取消処分を受けた経歴がある場合、産廃許可の審査に影響する可能性があります。

本記事では、

  • 産廃許可の人的要件とは何か
  • 欠格要件の具体的内容
  • 役員全員が対象になる理由
  • 建設業法違反歴が与える影響

を整理します。

産廃許可申請や更新、変更届(役員変更)を検討している建設会社は、まずこの人的要件を確認することが重要です。許可取得後の取消リスクを避けるためにも、制度の本質を正しく理解しておきましょう。

  1. 産廃許可における人的要件の全体像
    1. 1. 人的要件とは何か
    2. 2. 講習受講要件の詳細
      1. 誰が受講すべきか
      2. 新規講習と更新講習の違い
    3. 3. 対象者の範囲の詳細説明
  2. 欠格要件について(最も重要)
    1. 1. 欠格要件とは何か
    2. 2. 8つの欠格要件の詳細解説
      1. (1) 成年被後見人・被保佐人等
      2. (2) 破産者で復権を得ていない者
      3. (3) 禁錮以上の刑を受けた者(刑期満了から5年経過していない)
      4. (4) 特定の法律違反で罰金刑を受けた者(5年経過していない)
      5. (5) 暴力団員等
      6. (6) 許可取消から5年経過していない者
      7. (7) 許可取消の聴聞通知後に廃業届を出した者
      8. (8) その他の欠格事由
  3. 建設業法違反と産廃許可への影響
    1. 1. 建設業法違反で「罰金刑」を受けた場合
    2. 2. 建設業法違反で「禁錮以上の刑」を受けた場合
    3. 3. 執行猶予の扱いと5年ルール
  4. 具体的なケーススタディ
      1. ケース1:役員がプライベートで酒気帯び運転をし、罰金刑を受けた。
      2. ケース2:建設業の無許可営業が発覚し、会社に罰金刑が科された。
      3. ケース3:役員が居酒屋で喧嘩をし、暴行罪で罰金30万円の略式命令を受けた。
      4. ケース4:5%以上の株主である知人が、他社で産廃法違反(不法投棄)をして逮捕され、懲役刑になった。
  5. 実務上の注意点とチェックポイント
    1. 1. 許可取得前の確認事項
    2. 2. 許可取得後の維持管理
  6. よくある質問と回答 (Q&A)
  7. まとめ

この章のポイント

  • 「人」に関する要件は、大きく分けて「講習会の受講」「欠格要件に該当しないこと」の2つです。
  • 対象者は社長一人だけでなく、役員全員や株主、支店長も含まれます。

産業廃棄物の収集運搬業を行うには、単にトラックなどの設備があればよいわけではありません。「その事業を適正に行うことができる知識と能力があるか」「法令遵守の精神があるか」という、人(法人を含む)に対する資質が問われます。これを人的要件と呼びます。

具体的には以下の2つをクリアする必要があります。

  1. 能力要件:講習会を修了し、適正に処理を行う知識と技能を有していること。
  2. 欠格要件:法律で定められた「不適格な事由」に該当しないこと。

許可申請を行うためには、事前に指定の講習会を受講し、修了試験に合格しなければなりません。

誰が受講すべきか

法人の場合、代表取締役またはその業務を行う役員(監査役を除く)、あるいは政令で定める使用人(支店長など)が受講する必要があります。通常は、代表取締役または産廃事業担当の取締役が受講するのが一般的です。

新規講習と更新講習の違い

  • 新規講習:初めて許可を取る場合に受講します。2日間かけてじっくり学びます。
  • 更新講習:既に許可を持っており、更新申請をする場合に受講します。期間は短縮されますが、許可期限内に受講しなければなりません。

注意:講習会の修了証には有効期限があります(新規は5年、更新は2年が一般的)。申請時に有効期限が切れていないか注意が必要です。

人的要件(特に後述する欠格要件)の審査対象となるのは、申請者(法人そのもの)だけではありません。以下の人々全員が審査の対象となります

  • 法人の役員: 取締役だけでなく、監査役も含まれます。また、相談役や顧問といった肩書きであっても、実質的に経営支配力を持つと判断される場合は対象となります。
  • 5%以上の株主: 会社の総株主の議決権の100分の5以上を有する株主も対象です。建設業許可ではあまり意識されませんが、産廃許可では株主の経歴もチェックされます。
  • 政令使用人: 本店以外の支店や営業所で、契約締結権限を持つ支店長や営業所長などを指します。建設業許可でいう「令3条の使用人」に近い概念です。

この章のポイント

  • 欠格要件に一つでも該当すれば、許可は100%取得できません。
  • 既存の許可業者が該当した場合、許可は必ず取り消されます。
  • 「禁錮以上の刑」と「特定の法律違反による罰金刑」の区別が最重要です。

欠格要件とは、「こういう人には許可を与えてはいけない」と法律で定められたブラックリストのことです。これに該当すると、どんなに資金があり、優秀な設備を持っていても、許可を取得することは不可能です。また、行政庁の裁量が入る余地もありません。

廃棄物処理法第14条第5項第2号には、多数の欠格要件が定められています。ここでは建設業者が特に注意すべき主要なものを8つに整理して解説します。

(1) 成年被後見人・被保佐人等

心身の故障により業務を適正に行うことができない者として、環境省令で定める者です。

(2) 破産者で復権を得ていない者

破産手続き開始の決定を受けて、まだ「復権(権利の回復)」をしていない状態の者です。破産手続き中でも免責決定が確定して復権すれば、申請可能です。

(3) 禁錮以上の刑を受けた者(刑期満了から5年経過していない)

これは非常に重要です。「どのような法律違反であっても」、禁錮以上の刑(死刑、懲役、禁錮)に処せられた場合、刑の執行が終わってから5年間は許可が取れません。

  • 殺人や強盗などの刑法犯はもちろん、道路交通法違反などの過失犯であっても、禁錮以上の刑になれば該当します。
  • 執行猶予がついた場合については、以降で詳しく解説します。

(4) 特定の法律違反で罰金刑を受けた者(5年経過していない)

罰金刑の場合は、「何の法律で罰金になったか」が重要です。以下の法律違反で罰金刑を受けると、5年間許可が取れません。

  • 廃棄物処理法(無許可営業、不法投棄など)
  • 浄化槽法
  • 大気汚染防止法などの環境関連法
  • 刑法の一部(傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合罪、脅迫罪、背任罪
  • 暴力行為等処罰法

重要:ここに含まれていない法律(例:道路交通法や建設業法)での罰金刑であれば、産廃許可の欠格要件には該当しません。

(5) 暴力団員等

暴力団員、または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者は欠格となります。

(6) 許可取消から5年経過していない者

過去に産廃許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者です。

(7) 許可取消の聴聞通知後に廃業届を出した者

「許可を取り消されそうになったから、その前に自分から廃業届を出して逃げよう」とする行為を防ぐための規定です。これを行った場合も5年間は許可が取れません。

(8) その他の欠格事由

暴力団員等がその事業活動を支配する者なども含まれます。

この章のポイント

  • 建設業法違反で「罰金刑」なら、産廃許可の欠格要件にはなりません。
  • 「禁錮以上の刑」なら、どんな法律違反でもアウトです。
  • 執行猶予期間が満了すれば、5年待たずに直ちに申請可能です。

建設業者が最も気にする点かと思います。結論から申し上げますと、建設業法違反(無許可営業など)で「罰金刑」を受けただけであれば、産廃許可の欠格要件には該当しません。

なぜなら、前章で挙げた「特定の法律(罰金刑でアウトになる法律)」のリストの中に、建設業法は含まれていないからです。したがって、建設業法違反で罰金を払ったとしても、産廃許可は取得(維持)可能です。

しかし、違反の内容が悪質で、裁判で「懲役刑」や「禁錮刑」(執行猶予付きを含む)が言い渡された場合は話が別です。この場合は、「どのような法律違反であっても禁錮以上ならアウト」というルールが適用されるため、産廃許可の欠格要件に該当します。

「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」という規定について、執行猶予がついた場合の扱いは以下のようになります。

  • 執行猶予期間中: 刑に処せられている状態とみなされ、欠格要件に該当します。許可は取れません。
  • 執行猶予期間の満了後: ここが重要なポイントです。執行猶予期間が無事に経過すると、刑の言い渡し自体の効力が消滅します。そのため、5年の経過を待つ必要はなく、執行猶予期間が明けた翌日から直ちに許可申請が可能になります

(※実刑判決を受けた場合は、刑務所を出てから5年間待つ必要があります。)

ケース1:役員がプライベートで酒気帯び運転をし、罰金刑を受けた。

判定:○(許可取得可能)

解説:道路交通法違反による罰金刑は、産廃許可の欠格要件である「特定の法律」に含まれていません。したがって、罰金刑であれば許可に影響はありません。ただし、事故を起こして「禁錮刑(執行猶予含む)」になった場合は欠格となります。

ケース2:建設業の無許可営業が発覚し、会社に罰金刑が科された。

判定:○(許可取得可能)

解説:建設業法違反による罰金刑も、産廃許可の欠格要件には該当しません。産廃許可は維持できます。ただし、建設業許可の方では欠格事由や行政処分の対象となる可能性がありますのでご注意ください。

ケース3:役員が居酒屋で喧嘩をし、暴行罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

判定:×(欠格要件に該当・許可取消)

解説:刑法の「暴行罪」や「傷害罪」による罰金刑は、産廃許可の明確な欠格要件です。罰金を納めてから5年間は許可を取得できません。既に許可を持っている場合、この役員がいる限り許可は取り消されます。

ケース4:5%以上の株主である知人が、他社で産廃法違反(不法投棄)をして逮捕され、懲役刑になった。

判定:×(欠格要件に該当)

解説:産廃許可では、役員だけでなく「5%以上の株主」も審査対象です。株主が欠格要件(この場合は懲役刑)に該当してしまったため、御社の許可も下りない(または取り消される)ことになります。

この章のポイント

  • 申請前に「賞罰」の確認を全役員・主要株主に行うことが必須です。
  • 許可取得後に役員が逮捕された場合は、即座に対応が必要です。

申請書を提出する前に、必ず以下のチェックを行ってください。

  • 全役員の履歴確認: 監査役を含む全役員に対し、過去5年間に警察の世話になったことがないか(特に暴行、傷害、産廃関連)を確認してください。「昔のことで忘れていた」が一番危険です。
  • 株主名簿の確認: 5%以上を持つ株主が誰かを確認し、その人物または法人が欠格要件に該当していないか調査してください。
  • 他社の役員兼務状況: 自社の役員が、他社の役員を兼務していないか確認してください。その他社が産廃許可を取り消された場合、連鎖して自社も欠格になる恐れがあります。

許可取得後も、人的要件は維持し続けなければなりません。

  • 役員変更時の届出: 役員が変更になった場合、変更届を提出する必要があります。新任役員が欠格要件に該当していないか、就任前に必ずチェックしてください。もし該当者が就任してしまうと、会社全体の許可が取り消されます。
  • もし欠格事由が発生したら: 万が一、役員が欠格事由(例:暴行で罰金)に該当してしまった場合、速やかにその役員を辞任させることで、会社自体の許可取消を回避できる可能性があります(※タイミングと行政の判断によりますが、役員就任中の事由であれば即取消のリスクが高いです。事前のコンプライアンス教育が重要です)。

Q. 役員がスピード違反をして反則金を払いました。これは欠格要件になりますか?
A. いいえ、なりません。「反則金(青切符)」は刑罰ではないため問題ありません。また、赤切符で「罰金」になったとしても、道路交通法の罰金は欠格要件ではありません。

Q. 建設業許可を持っていれば、産廃許可の人的要件はクリアしていると考えていいですか?
A. いいえ、基準が異なります。例えば「暴行罪の罰金」は、建設業許可ではセーフ(欠格ではない)ですが、産廃許可ではアウト(欠格)です。産廃許可の方が「暴力」や「環境犯罪」に対して厳しい基準になっています。

Q. 監査役も講習を受ける必要がありますか?
A. 監査役は講習を受ける必要はありません。しかし、欠格要件の審査対象にはなります。

Q. 以前勤めていた会社が産廃許可を取り消されました。私はその時、平社員でしたが影響ありますか?
A. 原則として影響ありません。影響があるのは、取消処分の原因となった事実があった当時に「役員」であった場合です。

産業廃棄物収集運搬業許可における人的要件、特に欠格要件は非常に複雑かつ厳格です。「知らなかった」では済まされず、苦労して取得した建設業許可にまで悪影響を及ぼすリスクさえあります。

本資料で解説した通り、特に以下の3点をご記憶ください。

  1. 「禁錮以上の刑」は、どんな理由でも許可NG。
  2. 「罰金刑」は、建設業法違反ならOKだが、暴行や傷害ならNG。
  3. 役員だけでなく、株主や監査役も審査対象である。

もし、役員の経歴や株主の状況に少しでも不安がある場合は、申請前に必ず所轄の自治体または専門家である行政書士にご相談ください。事前の確認が、御社の事業を守る最大の防御策となります。

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