令和8年6月から施行される
新設サービス「計画相談支援」。
制度の概要は理解している。
自事業所への影響も把握している。
しかし、実際に事業として実施する場合、
- 追加の届出は必要なのか
- 変更申請で足りるのか
- 新たな指定区分での指定申請が必要なのか
- 既存の計画相談支援事業所は何をすればよいのか
といった「手続面」が明確でないままでは、動き出すことができません。
制度改正時に最も多い誤解は、
「既存指定があるからそのまま実施できるだろう」という思い込みです。
実際には、
✔ 指定権者ごとの運用
✔ みなし指定の有無
✔ 人員基準・運営基準の差異
✔ 体制等届出の追加
などを精査しなければなりません。
本記事では制度概要の説明は行わず、
“実施するために必要な行政手続”に絞って解説します。
各セクションでは、事業主が後から読み返しても理解できるよう、
単なる箇条書きではなく、実務の流れに沿って丁寧に説明します。
これから準備を始める事業所にとっての
“判断材料となる資料”としてご活用ください。
申請区分の判断と基本方針
令和8年6月施行の新設サービス計画相談支援(以下、「新設サービス」といいます)を開始するにあたり、貴社の現在の事業指定状況によって、とるべき手続きが大きく異なります。まずは、貴社が以下のどのケースに該当するかをご確認ください。
(1)現在「特定相談支援事業」の指定を受けている場合
既に特定相談支援事業(計画相談支援)の指定を受けている事業所であっても、本新設サービスは従来のサービス類型とは異なる報酬体系及び人員配置基準が適用されるため、原則として「変更届」ではなく「新規指定申請」または「指定区分の追加」に準じた手続きが必要となる可能性が高い点にご留意ください。
自治体(指定権者)の条例運用により、「変更届」での対応が可能となるケースも想定されますが、新設サービス固有の管理者を配置する必要性や、相談支援専門員の専従要件が課される場合、既存の指定枠組みの中での変更では対応しきれないことが通例です。したがって、まずは「新規事業の立ち上げ」と同様の準備(人員確保、設備基準の確認)を進めることを強く推奨いたします。
(2)相談支援事業の指定を全く受けていない場合
現在、就労継続支援や生活介護等の直接処遇サービスのみを行っており、相談支援事業の指定を受けていない場合は、完全に「新規指定申請」となります。法人定款の目的欄に「特定相談支援事業」等の記載があるかの確認から始まり、人員基準、設備基準をゼロから満たす必要があります。
具体的な申請手続きの流れと必要書類
(1)事前協議(事前相談)の実施
新設サービスの指定申請において、最も重要かつ時間がかかるのが「事前協議」です。多くの自治体では、指定日の2〜3ヶ月前までに事前協議を完了させることを求めています。令和8年6月1日指定を目指す場合、遅くとも同年3月頃には管轄の障害福祉課窓口へ相談に行く必要があります。
事前協議では、事業所の図面(相談室のプライバシー確保状況)、配置予定の従業者(特に相談支援専門員の資格要件と実務経験)、運営規程の案などを持参し、基準を満たしているかの予備審査を受けます。この段階で指摘された不備を解消しなければ、本申請を受理してもらうことはできません。
(2)本申請における主要な提出書類
本申請では、法定の様式に加え、新設サービス特有の要件を確認するための添付書類が求められます。特に以下の書類については、作成に時間を要するため早期の着手が求められます。
| 書類名称 | 作成・準備のポイント |
|---|---|
| 指定申請書(様式第1号等) | 新設サービスのサービスコードや種類を正確に記載します。既存事業所と同一敷地内で行う場合でも、別事業所番号が付番される可能性があるため、記載方法を窓口で確認してください。 |
| 付表(指定に係る記載事項) | 新設サービス専用の付表が用意される見込みです。管理者の兼務状況や、相談支援専門員の配置時間数などを詳細に記載します。 |
| 平面図・写真 | 相談室が個室であるか、パーティション等でプライバシーが遮蔽されているかが厳しく審査されます。鍵付き書庫の配置場所も明示が必要です。 |
| 組織体制図・勤務形態一覧表 | 新設サービスに従事する職員の勤務時間を明確にします。他の事業(例:居宅介護等)と兼務する場合は、按分時間を明確にし、常勤換算上の不整合がないよう調整が必要です。 |
| 実務経験証明書・資格証写し | 相談支援専門員として配置する職員の「実務経験」が、新設サービスの要件(特定の実務経験年数や研修修了)を満たしているか、証明書原本での確認が求められます。 |
| 運営規程 | 新設サービスの事業内容、営業時間、利用料等を定めた規程を作成します。既存の特定相談支援事業の運営規程がある場合でも、条文の追加・修正または別途作成が必要です。 |
「介護給付費等算定に係る体制等に関する届出書」の提出
指定申請とは別に、報酬請求を行うために「体制届(加算届)」の提出が不可欠です。新設サービスでは、従来の基本報酬とは異なる加算要件が設定されることが予想されます。
例えば、「機能強化加算」や「主任相談支援専門員配置加算」等の既存加算が、新設サービスにおいても適用されるか、あるいは新設サービス独自の加算体系(例:連携強化等の新設加算)が設けられるかについては、厚生労働省の報酬告示及びQ&A(令和8年春頃発出予定)を待つ必要があります。
体制届は、通常、指定月の前月15日頃が提出期限となります。指定申請と並行して、どの加算を取得するかをシミュレーションし、要件を満たすエビデンス資料(研修修了証や体制図)を準備しておく必要があります。加算の届出漏れは、事業収益に直結する重大な損失となりますので、細心の注意を払ってください。
定款変更及び登記手続きの必要性
法人の登記事項証明書(定款)の「目的」欄について、再確認をお願いいたします。
既存の事業主様であっても、新設サービスの名称や法的分類によっては、現在の定款目的
(例:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業」)では包含しきれない場合があります。
もし、新設サービスが全く新しい法的位置づけ(例:地域生活支援事業の一部など)として定義された場合、定款の目的変更登記が必要となります。定款変更には株主総会(または社員総会)の決議と、法務局への登記申請(約2週間)が必要です。指定申請時には「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)」の提出が必須となりますので、申請期限から逆算して、余裕を持って登記手続きを完了させておく必要があります。
行政書士からのアドバイスと今後のスケジュール
(1)ローカルルールの確認徹底
障害福祉サービスの指定基準は、厚生労働省令を基準としつつも、各自治体(都道府県・政令指定都市・中核市)が独自の条例や解釈通知を設けている場合が多々あります(いわゆるローカルルール)。
特に新設サービスのような過渡期においては、自治体担当者によっても見解が揺れることがあります。必ず「申請先の自治体の手引き」を入手し、不明点は書面やメール等の記録に残る形で問い合わせることを推奨します。
(2)スケジュール管理
令和8年6月施行に向けた標準的なスケジュールは以下の通りです。
- 令和8年1月~2月: 人員配置の確定、資格証・実務経験証明書の収集、定款確認(必要あれば変更登記)
- 令和8年3月: 自治体への事前協議予約・実施、図面確認
- 令和8年4月上旬~中旬: 本申請書類の提出(自治体により締切日が異なります)
- 令和8年5月中旬: 体制届(加算届)の提出
- 令和8年6月1日: 指定・事業開始


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