居宅介護事業所が 特定事業所加算 を取得するためには、
サービス体制だけでなく 計画的な研修の実施体制 を整えることが重要になります。
特に新規取得を目指す事業所からは、次のような相談をよく受けます。
・年間研修計画はどのように作ればよいのか
・事業所主催の実技研修では何をやればよいのか
・職員個別の研修計画とはどの程度のものが必要なのか
・外部研修や動画研修は利用できるのか
・研修レポートはどのような様式にすればよいのか
特定事業所加算の要件には「計画的な研修の実施」が含まれていますが、
実務では 「何を研修すればよいのか分からない」 という点で悩む事業所が多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 年間研修計画の作り方
- 事業所主催の実技研修の具体例
- 職員ごとの研修計画の作り方
- 外部研修・動画研修の活用方法
- 職員レポートの様式とチェック方法
について、北海道の事業所が実務でそのまま使えるレベルで具体的に解説します。
ぜひ 参考資料 として活用してください。
特定事業所加算とは何か ── 取得前に知っておくべき基礎知識
この章のポイント
- 特定事業所加算は「体制」「人材」「重度対応」の3要素で評価される。
- 特に「体制要件(研修等)」はすべての区分で必須となる基礎部分である。
- 加算取得は報酬増だけでなく、求人時のブランディングにも直結する。
加算の概要と目的
障がい福祉サービスにおける居宅介護の「特定事業所加算」とは、質の高いサービスを提供するための体制を整備し、良質な人材を確保し、かつ重度障がい者への対応を積極的に行っている事業所を評価するための加算制度です。
厚生労働省は、単にサービスを提供するだけでなく、職員の資質向上や組織的な運営管理を行っている事業所に対して、基本報酬に上乗せする形でインセンティブを与えています。令和6年度(2024年度)の報酬改定においても、その重要性は変わらず、むしろ質の高い人材育成が強く求められるようになっています。
北海道内の事業所においても、利用者様からの選ばれる事業所になるため、また深刻な人材不足の中で「教育体制が整っている職場」としてアピールするために、本加算の取得は経営戦略上極めて重要です。
3つの算定要件の詳細説明
特定事業所加算には、大きく分けて4つの区分(Ⅰ~Ⅳ)がありますが、これらは以下の3つの要件の組み合わせによって決定されます。
① 体制要件(サービス提供体制の整備)
これが本マニュアルの主題となる部分です。研修の計画的な実施、定期的な会議の開催、健康診断の実施など、組織として当たり前のことを高い水準で行っていることが求められます。どの加算区分を目指す場合でも、この「体制要件」は必須となります。
② 人材要件(良質な人材の確保)
配置されている職員の資格保有状況に関する要件です。具体的には以下のいずれかを満たす必要があります。
- 介護福祉士の割合が30%以上であること
- または、介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員基礎研修修了者、ヘルパー1級修了者の合計が50%以上であること
③ 重度者要件(重度障害者への対応)
利用者のうち、障害支援区分5以上や喀痰吸引等を必要とする方、医療的ケア児などの割合が一定以上(30%または50%)であることを求める要件です。
【加算区分と算定率】
| 区分 | 要件の組み合わせ | 加算率 |
|---|---|---|
| 特定事業所加算(Ⅰ) | ①体制 + ②人材 + ③重度(30%以上) | 所定単位数の20% |
| 特定事業所加算(Ⅱ) | ①体制 + ②人材 | 所定単位数の10% |
| 特定事業所加算(Ⅲ) | ①体制 + ③重度(30%以上) | 所定単位数の10% |
| 特定事業所加算(Ⅳ) | ①体制 + ③重度(50%以上) | 所定単位数の5% |
新規で取得を目指す場合、重度者の割合はコントロールが難しいため、まずは「特定事業所加算(Ⅱ)」(体制要件+人材要件)の取得を目指すのが現実的かつ一般的です。
加算取得による経営上のメリット
加算を取得することによる最大のメリットは、当然ながら収益の増加です。例えば、月の基本報酬売上が300万円の事業所が特定事業所加算(Ⅱ)を取得した場合、単純計算で月額約30万円、年間で360万円の増収となります。
この増収分は、職員の処遇改善(賃金アップ)や研修費用の原資として活用できます。さらに、「特定事業所加算算定事業所」であることは、ハローワークや求人媒体において「教育研修制度が充実している」「質の高い事業所である」という強力なアピール材料となります。北海道内の競合他社との差別化を図る上でも、本加算の取得は必須と言えるでしょう。
①サービス提供体制の整備要件の全体像
この章のポイント
- 体制要件は5つの項目すべてを満たす必要がある。
- 「指示」と「報告」は都度文書化が必要であり、口頭のみは不可。
- 会議は全員参加が原則だが、やむを得ない場合は議事録確認で代用可能。
5つの体制要件の概説
特定事業所加算の基礎となる「体制要件」は、以下の5つの項目すべてを満たしている必要があります。どれか一つでも欠ければ算定できません。
- 計画的な研修の実施(本マニュアルで詳述)
- 定期的な会議の開催(概ね週1回以上)
- 文書等による指示及びサービス提供後の報告
- 定期的な健康診断の実施(年1回以上)
- 緊急時における対応方法の明示
会議・情報共有の実施方法
「利用者に関する情報やサービス提供上の留意事項の伝達」を目的とした会議を、概ね週1回以上開催する必要があります。
北海道のような広域なエリアでサービスを提供する場合、全職員が一堂に会することが物理的に難しいケースもあります。その場合、ZoomやLINE WORKS等のICTツールを活用したオンライン会議も認められています。また、どうしても参加できない職員に対しては、必ず議事録を回覧し、確認のサインをもらう等の措置が必要です。
【議事録に残すべき必須項目】
開催日時、場所、出席者名、議題(利用者ごとの特記事項、ヒヤリハット共有等)、欠席者への周知方法。
指示・報告の文書化
サービス提供責任者がヘルパーに対して、サービス提供前に「文書等(スマホ等の電子媒体含む)」で指示を行い、サービス終了後にヘルパーから報告を受ける体制が必要です。
多くの事業所では、サービス手順書や指示書を事前に配布していますが、特定事業所加算では「日々の変化に応じた指示」も重要視されます。例えば、LINE等の業務用チャットツールを用いて「本日は〇〇さんの体調が優れないため、入浴介助時の顔色に注意してください」といった指示を出し、ヘルパーが「確認しました」と返信、終了後に「顔色は良好でした」と報告する履歴を残すことも、有効な証拠資料となります。
研修計画の策定方法 ── 年間計画と個別計画の作成
この章のポイント
- 「年間研修計画」と「個別研修計画」の両方が必要である。
- 個別研修計画は、登録ヘルパーを含む「全職員」分を作成しなければならない。
- 年度開始前(3月中)に計画を策定することが原則。
年間研修計画(事業所全体計画)の策定
年間研修計画とは、事業所全体として「いつ」「どんなテーマで」「誰を対象に」研修を行うかを定めたスケジュール表です。事業所が重視するケアの方針や、法定研修(虐待防止、感染症対策等)を網羅的に組み込みます。
策定は原則として、当該年度が始まる前(3月中)に行います。以下は、北海道の季節性や業務特性を考慮したモデルプランです。
【年間研修スケジュール(モデル例)】
| 月 | テーマ・内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 4月 | 年度方針・職業倫理・プライバシー保護 新年度の目標確認、接遇マナーの基本 | 全員 |
| 5月 | 障害特性の理解(身体・知的・精神) 各障害の基礎知識と関わり方の基本 | 全員 |
| 6月 | 感染症対策・食中毒予防 梅雨・夏場に向けた衛生管理手技 | 全員 |
| 7月 | 【実技】移乗・移動介助技術 ボディメカニクスを活用した腰痛予防 | 介助職 |
| 8月 | 熱中症・脱水症対応・緊急時対応 夏場の体調管理と急変時の救急対応 | 全員 |
| 9月 | 虐待防止・身体拘束適正化・権利擁護 虐待の芽への気づき、不適切なケアの排除 | 全員 |
| 10月 | 【実技】排泄介助・おむつ交換 尊厳を守るケア、皮膚トラブルの予防 | 介助職 |
| 11月 | 難病(ALS・筋ジス等)の理解と支援 進行性疾患の特性とコミュニケーション支援 | 全員 |
| 12月 | BCP(業務継続計画)研修・冬道の安全 冬期間の災害・事故防止、移動リスク管理 | 全員 |
| 1月 | 個人情報保護・SNS利用の注意点 事例で学ぶ守秘義務違反のリスク | 全員 |
| 2月 | 【実技】医療的ケアの基礎知識 喀痰吸引等の概要、経管栄養の注意点 | 全員 |
| 3月 | 年間振り返り・次年度計画策定 個別研修の評価面談、自己評価 | 全員 |
【よくある誤解と正しい理解】研修の実施頻度について
❌ 誤解:「実技研修を毎月やらなければならない」
✅ 正解:「年間を通じて計画的に研修を実施すればよい」
■ 特定事業所加算で求められる研修要件の正しい理解
特定事業所加算の「計画的な研修の実施」とは、以下の2点を満たすことです。
- 年間研修計画を策定していること(1年間でどんな研修をいつ行うか計画を立てる)
- 個別研修計画に基づき、各職員が年1回以上の研修を受講していること
■ 実技研修の実施頻度の目安
実技研修は年間3~4回程度が一般的です。例えば:
- 7月:移乗・移動介助の実技研修
- 10月:排泄介助・おむつ交換の実技研修
- 2月:医療的ケアの基礎知識(喀痰吸引等)の実技研修
残りの月は座学(講義形式)や外部研修、動画研修などを組み合わせます。すべて実技研修にする必要はまったくありません。
■ 毎月何かしらの研修をする必要はあるのか?
事業所全体として毎月研修を行う義務はありません。ただし、以下の観点から、月1回程度のペースで何らかの研修活動(全体研修・外部研修参加の伝達研修・動画視聴など)を行うことが望ましいとされています。
- 職員の資質向上を継続的に図るという加算の趣旨に合致する
- 実地指導で「計画的に実施している」ことを示しやすい
- 法定研修(虐待防止・感染症対策・BCP等)を含めると、年間10~12テーマ程度は必要になる
■ 個々の職員について
各職員は年1回以上の研修受講が必須ですが、これは以下のいずれでも構いません。
- 事業所が開催する全体研修への参加(実技でも座学でも可)
- 外部研修への参加
- 動画研修の受講(レポート提出が必須)
- OJT(計画的な職場内訓練)の受講
■ 実地指導で問われるポイント
行政の実地指導では、以下の点が確認されます。
- 年間研修計画書が作成されているか
- 全職員(登録ヘルパー含む)の個別研修計画書が作成されているか
- 計画に基づいた研修が実施され、記録(出席簿・レポート等)が保管されているか
- 各職員が年1回以上研修を受けているか
つまり、「毎月実技研修」ではなく、「年間を通じて計画的に、かつ全職員が最低年1回は受講している」ことが重要です。
■ 北海道の事業所に多い実施パターン(参考例)
| 区分 | 要件の組み合わせ | 加算率 |
|---|---|---|
| 特定事業所加算(Ⅰ) | ①体制 + ②人材 + ③重度(30%以上) | 所定単位数の20% |
| 特定事業所加算(Ⅱ) | ①体制 + ②人材 | 所定単位数の10% |
| 特定事業所加算(Ⅲ) | ①体制 + ③重度(30%以上) | 所定単位数の10% |
| 実施頻度 | 内容 |
|---|---|
| 年12回 | 月1回ペースで何らかの研修(全体3回、実技3回、外部伝達2回、動画4回など組み合わせ) |
| 年6~8回 | 隔月ペースで事業所研修を実施し、個々の職員は外部研修や動画で補完 |
| 年4~5回 | 最低限の実施。法定研修中心で、実技は年2回程度。個別には外部・動画を活用 |
結論:実技研修を毎月行う必要はありません。年間3~4回の実技研修と、座学・外部研修・動画研修を組み合わせて、全職員が年1回以上研修を受ける体制を整えればOKです。
個別研修計画の策定
特定事業所加算において最も事務負担が大きいのが、この「個別研修計画」です。これは職員一人ひとりの能力や経験年数に合わせて作成する個別の育成計画書です。
重要なポイントは、正社員だけでなく、パート・登録ヘルパーを含む「全従業者」について作成が必要である点です。
計画書には以下の項目を盛り込みます。
- 基本情報:氏名、職種、資格、経験年数
- 現状の評価:現在できること、課題となっていること
- 育成目標:今年度達成したい具体的な目標(例:「移乗介助を一人で安全に行えるようになる」)
- 受講予定の研修:上記年間計画の中から、その職員が受けるべき研修、または外部研修
計画策定のスケジュール
理想的なPDCAサイクルは以下の通りです。
- 3月上旬:職員との面談(前年度の振り返りと次年度の目標設定)
- 3月下旬:個別研修計画書の作成・本人への提示と同意
- 4月~翌3月:計画に基づいた研修の実施・記録
- 随時:中途入職者がいた場合は、入職時に速やかに作成
事業所主催の実技研修 ── テーマ・内容・実施方法の詳細
この章のポイント
- 座学だけでなく「実技研修」を取り入れることが質の向上に直結する。
- 北海道の地域特性(冬期対応等)もテーマに盛り込むと独自性が高まる。
- 準備・実施・振り返りのプロセスを確実に記録に残す。
実技研修を行う意義
居宅介護は、利用者の自宅という密室で、かつ限られた設備環境の中でサービスを提供します。そのため、教科書通りの技術が通用しない場面も多々あります。事業所内で実技研修を行うことで、ベテラン職員の「コツ」を共有したり、誤った身体の使い方による腰痛リスクを低減させたりすることができます。また、実技研修は職員間のコミュニケーションを活性化させる効果もあります。
推奨する実技研修テーマ12選
事業主様が「何を研修すればよいかわからない」と悩まれることが多い部分です。以下に、すぐに使える具体的なテーマを挙げます。
テーマ1:ボディメカニクスと腰痛予防
支持基底面を広く取る、重心を低くする等の基本原則を再確認し、ベッドから車椅子への移乗をペアで行います。「力任せの介助」がいかに利用者と介助者双方に負担かを体感させます。
テーマ2:安全な移乗介助(スライディングボード等の活用)
福祉用具を活用した移乗方法を練習します。北海道の冬場は厚着になるため、衣服の摩擦を考慮した介助の工夫なども盛り込みます。
テーマ3:排泄介助・おむつ交換の技術
漏れない当て方だけでなく、プライバシーに配慮したタオルワーク(露出を最小限にする技術)を重点的に練習します。
テーマ4:体位変換とポジショニング
拘縮のある利用者や、重症心身障がいの方を想定し、クッションを使った安楽な姿勢の作り方を学びます。褥瘡(床ずれ)予防の観点を含めます。
テーマ5:食事介助・口腔ケア
とろみ剤の適切な濃度調整の体験や、相互に口腔ケア(歯磨き)を行い、不快感のないケア方法を学びます。誤嚥対応(背部叩打法等)もセットで行います。
テーマ6:衣服の着脱・更衣介助
麻痺がある場合(脱健着患)の原則確認や、拘縮がある方の更衣を、痛みを伴わないように行う技術を学びます。
テーマ7:緊急時対応(CPR・AED)
人形を用いた心肺蘇生法や、誤嚥時のハイムリッヒ法などのシミュレーションを行います。消防署の救命講習を利用するのも有効です。
テーマ8:感染症対策・PPE着脱
ガウン、手袋、マスクの正しい着脱順序を実演します。蛍光塗料ローションを使って「手洗いの洗い残しチェック」を行うと視覚的に理解できます。
テーマ9:コミュニケーション支援(AAC)
文字盤や透明文字盤を使った意思伝達の練習を行います。言葉を発せない利用者役を体験することで、待つことの重要性を学びます。
テーマ10:視覚障害者の移動支援(手引き)
アイマスクを着用し、利用者役となって階段昇降や狭い通路の歩行を体験します。同行援護従業者だけでなく、居宅介護職員も知っておくべき技術です。
テーマ11:入浴介助・清拭
実際の浴室を使えない場合でも、ベッド上での洗髪(ケリーパッドの使用)や温タオルでの清拭方法を練習します。保温への配慮を重視します。
テーマ12:冬期の移動・外出支援(北海道特化)
積雪・凍結路面での車椅子操作、防寒対策、送迎車両への乗降介助など、北海道特有のリスク管理を実地で確認します。
実技研修の実施方法・段取り
実技研修は準備が重要です。以下の手順で進めます。
- 企画:テーマ決定、講師(内部のサ責や外部専門職)の依頼、必要物品(車椅子、ベッド、おむつ等)の準備。
- 告知:開催日時を周知し、参加者を募る。
- 当日:「講義(15分)→実技デモ(15分)→ペア練習(30分)→振り返り(15分)」といった構成が集中力を保ちやすいです。
- 記録:参加者名簿への署名、研修中の写真撮影(記録用)、レポート提出。
職員に実施させる個別の研修 ── 外部研修・動画研修の活用
この章のポイント
- すべての研修を自社で開催する必要はない。外部資源を有効活用する。
- 北海道内の各団体が主催する研修情報を常にチェックする。
- 動画研修は「見ただけ」にならないよう、レポート提出を必須とする。
外部研修の活用
専門性の高い内容や、公的な資格に関わる内容は外部研修を活用しましょう。北海道内で利用できる主な研修機関・機会は以下の通りです。
- 北海道福祉人材センター:階層別研修や専門研修を多数開催しています。
- 北海道難病連:難病患者等ホームヘルプサービス養成研修など、専門的な研修を行っています。
- 日本福祉介護教育センター等:民間教育機関による喀痰吸引等研修やガイドヘルパー養成研修。
- 各市町村・振興局:虐待防止研修や集団指導など。
外部研修に参加した職員には、必ず復命書(レポート)を提出させ、事業所内の会議で伝達研修(学んだことを他の職員に教える)を行うと、加算要件としても非常に高く評価されます。
動画・eラーニングの活用
全職員を集めるのが難しい場合、YouTubeや有料のeラーニングシステムの活用が認められています。
- 厚生労働省・WAM NET:無料で視聴できる研修動画が多数公開されています。
- 民間eラーニング:「カイポケ」や「ジョブメドレー」などが提供する研修動画サービスは、視聴履歴管理が容易で便利です。
【注意点】
動画を見せるだけでは「研修を実施した」証拠として弱いです。「いつ、誰が、どの動画を視聴し、何を学んだか」を記載したレポートの提出とセットで完結すると考えてください。
OJTの研修としての位置づけ
日常業務の中で先輩が後輩に教えるOJT(On-the-Job Training)も、計画的に行えば研修として認められます。ただし、「なんとなく同行して教えた」では認められません。
「〇月〇日、利用者A様宅にて、鈴木サ責が佐藤ヘルパーに対し、移乗介助の手順について指導を行った」という記録(OJT実施記録)を残すことで、個別研修の実績としてカウントできます。
研修レポート(報告書)の様式と記入方法
この章のポイント
- 研修レポートは「監査・実地指導」における最重要証拠書類である。
- 「感想」ではなく「学び」と「実践への活用」を書かせることが重要。
- 標準様式を定め、全職員に統一して使用させる。
研修レポートの目的と必要性
行政の実地指導において、研修計画があっても「実施した記録」がなければ、加算の返還を求められる可能性があります。その実施証明となるのが「研修レポート」です。また、職員自身が学びを言語化することで、定着を図る教育的効果もあります。
研修レポート様式の標準様式
レポートには以下の項目を網羅した様式を使用してください。複雑すぎると職員が書くのを嫌がるため、シンプルかつ要点を押さえた構成にします。

事業所主催の実技研修での出席簿・議事録
事業所内で研修を開催した場合は、個人のレポートに加えて、主催者側で以下の記録を残します。
- 研修案内文:いつ、どこでやるかを周知した文書。
- レジュメ・資料:当日配布した資料。
- 出席簿:参加者全員の自署サインが入ったもの。
- 研修写真:実施風景を撮影し、報告書に添付しておくと強力なエビデンスになります。
管理者によるレポートのチェック・評価方法
この章のポイント
- 提出されたレポートは必ず管理者が目を通し、コメントを返す。
- 「勉強になりました」だけの希薄な内容は再提出を促す。
- 計画通りに実施されているか、四半期ごとに進捗を確認する。
管理者が確認すべきチェックポイント
職員からレポートが提出されたら、管理者は以下の視点でチェックを行います。
- 内容の理解度:研修の要点を正しく理解しているか。
- 具体性:「頑張ります」「気をつけます」といった精神論だけでなく、「声掛けを〇〇に変える」「確認手順を一つ増やす」などの具体的行動が書かれているか。
- 計画との整合性:個別研修計画で定めた目標に沿った内容か。
フィードバックの与え方
レポートを受け取ったら、必ず一言コメントを書いて返却するか、面談で触れてください。承認欲求が満たされ、次回のモチベーションに繋がります。
【悪いフィードバック例】
「確認しました」のハンコのみ。
【良いフィードバック例】
「〇〇という視点に気づいたのは素晴らしいですね。来週のAさんのケアで早速実践してみましょう。」
個別研修計画と実績の照合・年度末評価
年度末(3月)には、期首に立てた「個別研修計画」と、実際に提出された「研修レポート」を突き合わせます。計画通りに受講できたか、目標は達成されたかを評価し、「研修実施状況報告書(総括表)」としてまとめておくと、次年度の計画策定がスムーズになります。
運営指導(実地指導)への対応
特定事業所加算を算定している場合、運営指導では研修関係の書類が重点的にチェックされます。以下の書類がすぐに取り出せるように整理しておきましょう。
- 年間研修計画書
- 全従業員の個別研修計画書
- 研修実施時の案内・レジュメ・出席簿
- 全従業員の研修レポート
研修記録のファイリング・保管方法
この章のポイント
- 書類は原則2年間(自治体によっては5年間)の保存義務がある。
- 「年度別」「研修別」または「個人別」で整理する。
保管方法の基本ルール
紙媒体で保管する場合、以下の2種類のファイルを作成することをお勧めします。
① 【全体研修ファイル】(年度ごと)
年間研修計画書を先頭に、月ごとの全体研修の記録(案内・レジュメ・出席簿・議事録)を時系列で閉じる。
② 【職員別研修ファイル】(五十音順など)
職員ごとにインデックスを貼り、個別研修計画書と、その職員が提出した研修レポート、外部研修の修了証コピーなどを個人ごとにまとめて閉じる。
電子媒体での管理方法
ペーパーレス化を進める場合、スキャンしたPDFデータや作成したWordデータをサーバーやクラウドに保存することも可能です。ただし、以下の点に注意してください。
- 検索性:「令和7年度_田中花子_研修記録」のように、いつ誰の記録かすぐにわかるファイル名にする。
- 真正性:後から改ざんできないような運用ルール(PDF化など)を設ける。
- バックアップ:データ消失リスクに備える。
※行政の実地指導担当官によっては、紙での提示を求められる場合もあるため、いつでも印刷できる状態にしておくことが必要です。
まとめ ── 特定事業所加算取得に向けた行動スケジュール
この章のポイント
- 準備から申請まで最低でも2〜3ヶ月の準備期間を見込む。
- 加算は「届出を受理された翌月」から算定開始となる。
- 専門家(行政書士)の活用も視野に入れる。
新規取得に向けた6ヶ月行動計画
特定事業所加算を新規で取得するための標準的なスケジュール例です。
- 【1ヶ月目:現状分析・体制整備】
- 職員の資格要件(介護福祉士率等)の計算。
- 利用者区分の確認。
- 会議定例化の開始、指示報告ルールの確立。
- 【2ヶ月目:研修計画策定】
- 年間研修計画の作成。
- 全職員へのヒアリングと個別研修計画の作成。
- 【3ヶ月目:実績作り】
- 計画に基づき研修を実施し、レポートを提出させる。
- 会議議事録等の運用実績を蓄積する。
- 【4ヶ月目:届出準備】
- 指定権者(北海道や各振興局・市町村)への体制届出書の作成。
- 必要添付書類の準備。
- 【5ヶ月目:届出提出】
- 原則として前月15日(自治体により異なる)までに提出。
- 【6ヶ月目:算定開始】
- 受理された翌月1日から加算算定スタート。
参考資料 様式集
以下は、実際に現場で使用するための簡易テンプレートです。コピー&ペーストしてWord等で整えてご使用ください。
様式1:年間研修計画書
令和〇年度 年間研修計画書
事業所名:[ ]
| 月 | 研修テーマ | 具体的な内容 | 対象者 | 実施方法 |
|---|---|---|---|---|
| 4月 | 倫理・法令遵守 | プライバシー保護、虐待防止 | 全職員 | 全体研修 |
| 5月 | … | … | … | … |
作成日:令和 年 月 日 管理者:[印]
様式2:個別研修計画書
令和〇年度 個別研修計画書
氏名:[ ]
職種:[ ]
作成日:令和 年 月 日
| 本人の現状と課題 | |
|---|---|
| (現在のスキルや課題を記入) | |
| 今年度の育成目標 | |
| (達成したい目標を記入) | |
| 予定研修名 | 実施予定時期 |
| 移乗介助実技研修 | 7月頃 |
| 虐待防止研修 | 9月頃 |
本人署名:[ ] 説明者(管理者):[ ]


コメント