建設業のための産廃許可入門|まず理解すべき「排出事業者責任」と元請の責任とは?

産業廃棄物運搬許可の取得について基本を解説する記事のアイキャッチ画像 産業廃棄物収集運搬

建設工事を行う会社であれば、一度は「産廃許可は必要なのか?」と考えたことがあるのではないでしょうか。

ダンプやトラックを所有している建設会社の中には、「自社の廃材だから自由に運んでよい」と誤解しているケースも少なくありません。しかし、産業廃棄物の処理には、排出事業者責任という大原則があり、建設業では特に“元請の責任”が重くなります。

産業廃棄物収集運搬業の許可制度は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(いわゆる廃掃法)に基づく厳格な制度です。許可の要件や申請手続を理解する前に、まずは次の4つの前提を押さえる必要があります。

  • 産廃は「排出事業者責任」が原則
  • 建設業では元請が排出事業者になる
  • 下請が勝手に運べないケースがある
  • 建設系産廃は種類が限定されている

これらを理解せずに産廃許可申請を進めると、「そもそも許可が必要なケースだったのか」「誰が許可を取るべきだったのか」という根本的な誤りが生じます。

本記事では、建設業特化の行政書士の視点から、産廃許可の“制度の土台”をわかりやすく整理します。今後、産廃許可申請・更新・変更届・講習会などを検討する建設会社の経営者・実務担当者の方は、まずここから理解してください。

事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律で定められた20種類のもの(燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類など)を指します。これらは一般廃棄物とは区別され、排出事業者が自らの責任で適正に処理しなければなりません。

他人の産業廃棄物を扱う場合、主に以下の2つの許可が必要です。

  • 産業廃棄物収集運搬業許可:廃棄物を排出場所から処分場所へ運ぶための許可。
  • 産業廃棄物処分業許可:廃棄物を焼却、破砕、選別などで処分(中間処理・最終処分)するための許可。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)により、許可を持たない者が他人の産業廃棄物を運搬したり処分したりすることは禁止されています(無許可営業)。違反した場合、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科」という非常に重い刑罰が科されます。

【重要】建設業者が知っておくべき基本原則

産業廃棄物は、それを出した事業者(排出事業者)が、自らの責任において適正に処理しなければならないという原則です。処理を業者に委託する場合でも、最終処分が完了するまでの責任は排出事業者にあります。

建設工事(解体工事、新築工事、修繕工事など)に伴って生じる廃棄物については、原則として「工事の元請業者」が排出事業者となります(廃掃法第21条の3)。

下請業者は排出事業者ではありません。したがって、下請業者が現場から廃棄物を運び出す行為は、「他人の廃棄物(元請の廃棄物)を運んでいる」ことになります。

上記の原則により、下請業者が産業廃棄物収集運搬業の許可を持たずに、現場のゴミを自社のトラックで持ち帰ったり、処分場へ運んだりすることは違法(無許可営業)となります。

例:内装工事の下請けが、現場で出た石膏ボードの切れ端を自社の倉庫に持ち帰る行為 ⇒ 許可が必要

元請業者は、自社で運搬・処分するか、許可を持つ業者に委託(委託契約の締結・マニフェストの発行)する義務があります。下請業者に廃棄物処理を任せる場合でも、その下請業者が許可業者でなければ委託できません。

建設現場から排出される主な産業廃棄物は以下の通りです。許可申請時には、取り扱う品目を特定する必要があります。

種類具体例
がれき類コンクリート殻、アスファルト殻、レンガ破片など(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものに限る)
木くず建設廃材、足場材の木片、解体木材など(建設業に係るもの)
廃プラスチック類ビニールシート、発泡スチロール、断熱材、合成樹脂製の管、養生シートなど
金属くず鉄筋、鉄骨、番線、空き缶、金属製サッシなど
ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず窓ガラス、石膏ボード、サイディング材(金属系を除く)、タイル、便器など
紙くず壁紙、障子紙、包装紙など(建設業に係るもの)
繊維くず畳、カーペット、作業着、ロープなど(建設業に係るもの)

※「混合廃棄物」として排出される場合は、含まれる品目すべての許可が必要です。

標準的な許可取得(収集運搬業)のスケジュールは以下の通りです。

講習会の受講状況、車両の確保、財務状況などの基本要件を確認します。

住民票、登記簿謄本、納税証明書などの公的書類を取得します。また、講習会の修了証を用意します。

事業計画書を作成し、申請書一式を整えます。都道府県ごとのローカルルールにも対応します。

管轄の自治体(都道府県や政令市)の窓口に申請します。手数料(新規の場合81,000円程度)を納付します。審査期間は標準で約2ヶ月です。

審査に合格すると許可証が交付されます。これにより営業開始が可能となります。

許可を受けるためには、以下の4つの基準をクリアする必要があります。

  • 運搬車両:ダンプ、トラックなど。車検証の用途が適切であり、土砂禁などの制限がないこと。
  • 運搬容器:飛散・流出防止のための容器(フレコンバック、ドラム缶など)やシート。
  • 駐車場:使用権原のある車庫があること。

申請者(法人の場合は役員や政令使用人)が、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物収集運搬業の許可申請に関する講習会」を修了していること。

事業を継続して行うことができる経理的基礎を有していること。
※直近決算が債務超過や赤字の場合、中小企業診断士による診断書や事業計画書の追加提出が求められることがあります。

申請者や役員、株主などが、過去に禁錮以上の刑を受けて5年を経過していない場合や、暴力団員である場合などは許可を受けられません。

  • 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
  • 事業計画の概要書
  • 定款(現行のもの)
  • 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
  • 役員全員の住民票(本籍地記載)
  • 役員全員の「登記されていないことの証明書」
  • 講習会修了証の写し
  • 直近3年分の決算書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)
  • 納税証明書(法人税等)
  • 運搬車両の車検証の写し、写真
  • 車庫の案内図、配置図、使用権原を疎明する書類(賃貸借契約書など)

原則として5年間です(優良認定業者は7年)。期限が切れる前に更新手続きが必要です。

「積み込む場所(排出地)」と「降ろす場所(処分地)」を管轄するそれぞれの自治体の許可が必要です。
例:東京都の現場から、埼玉県の処分場へ運ぶ場合 ⇒ 「東京都」と「埼玉県」の両方の許可が必要。

自社が元請となる工事で発生した廃棄物を自社で運搬する場合、収集運搬業の許可は不要です(自社運搬)。ただし、運搬車への表示義務や書面の携帯義務は遵守する必要があります。本許可が必要になるのは、主に「下請として工事に入り、元請が出したゴミを運ぶ場合」「他社の廃棄物運搬を請け負う場合」です。

建設業において産業廃棄物収集運搬業の許可を取得することは、コンプライアンス遵守の観点から非常に重要です。特に下請工事において廃棄物を運搬する可能性がある場合は、必須の許可と言えます。

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