家族が亡くなると、悲しみの中でさまざまな手続きを進めなければなりません。しかし、相続手続きは普段経験するものではないため、「何から始めればよいのかわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。
実際、相続には戸籍の収集や相続人の確認、財産の調査、遺産分割の話し合い、銀行口座や不動産の名義変更など、多くの手続きが必要になります。また、相続放棄や相続税申告など、期限が決められている手続きもあります。
この記事では、相続が発生した後に行う主な手続きの流れを整理し、「相続手続きは何から始めればよいのか」をわかりやすく解説します。これから相続手続きを進める方が、全体像を把握するための参考としてぜひご覧ください。
相続手続きには期限があるものが多い
相続が発生すると、さまざまな手続きを進める必要があります。相続手続きの特徴として、期限が決められている手続きが多いという点があります。期限を過ぎてしまうと、本来利用できた制度が使えなくなったり、不利益を受ける可能性があるため注意が必要です。
まず、亡くなった場合に最初に必要になるのが死亡届の提出です。死亡届は、原則として死亡を知った日から7日以内に市区町村役場へ提出しなければなりません。通常は葬儀社が手続きを代行することが多いですが、提出が遅れると行政手続きに影響することがあります。
次に重要なのが相続放棄の期限です。相続では、財産だけでなく借金などの負債も引き継ぐことになります。そのため、借金が多い場合などは相続を放棄するという選択肢があります。この相続放棄の手続きは、原則として相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申立てを行う必要があります。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続を承認したものとみなされる可能性があります。
さらに、相続税が発生する場合には、相続税の申告期限にも注意が必要です。相続税の申告と納税は、原則として相続開始を知った日から10か月以内に行う必要があります。期限までに申告をしなかった場合、延滞税や加算税が課されることがあります。
このように、相続手続きには期限があるものが多く、手続きの流れを把握しておくことが重要です。相続が発生した直後は精神的にも忙しい時期ですが、重要な期限を見落とさないよう注意する必要があります。
相続発生後の主な手続きの流れ
相続手続きは一度にすべて行うものではなく、一定の順序に沿って進めていきます。ここでは、一般的な相続手続きの流れを解説します。

①死亡届の提出
相続が発生した場合、最初に行う必要があるのが死亡届の提出です。死亡届は医師が作成する死亡診断書と一体になっており、市区町村役場に提出することで戸籍に死亡の事実が記載されます。
この手続きが完了しないと、火葬許可証の発行やさまざまな行政手続きが進められないため、非常に重要な手続きです。多くの場合、葬儀社が提出を代行することになります。
②遺言書の確認
死亡届の提出後は、遺言書の有無を確認することが重要です。遺言書がある場合、遺産の分け方は基本的に遺言書の内容に従って行われるため、相続手続きの方向性が大きく変わります。
★自宅で保管されている遺言書
★法務局で保管されている自筆証書遺言
★公証役場で作成された公正証書遺言
など、遺言書の種類によって手続きが異なります。
遺言書の有無は、主に「公証役場(公正証書遺言の場合)」か「自宅・貸金庫(自筆証書遺言の場合)」で調査します。1989年以降の公正証書遺言は全国の公証役場で検索可能、自筆証書は法務局の保管制度や自宅の保管場所を捜索します。
具体的には以下の手順で行います。
1. 公正証書遺言の調査(最も確実)
公証人が作成した遺言書は、全国の公証役場で検索可能です。 日本公証人連合会
- 場所: 最寄りの公証役場。
- 方法: 相続人などの利害関係人が「遺言検索システム」を利用して調査。
- 必要書類:
- 遺言者が死亡した事実がわかる除籍謄本・全部事項証明書
- 相続人であることがわかる戸籍謄本
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 印鑑(認印でも可)
- 注意: 1989年(平成元年)以降に作成されたものが対象。
2. 自筆証書遺言の調査
故人が自分で保管していた、または法務局に預けていた場合です。
- 自宅の捜索: 金庫、タンス、仏壇、机の引き出し、本の間など。
- 貸金庫の確認: 銀行に貸金庫があった場合、契約者死亡後に開扉手続きをして確認。
- 法務局の「遺言書保管制度」の確認: 2020年7月10日以降に法務局に保管されたもの。最寄りの法務局で「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行い、保管の有無を確認する。
3. 専門家・銀行への確認
- 関係者への確認: 故人の親しい友人、顧問弁護士、税理士に心当たりがないか尋ねる。
- 金融機関: 財産を管理していた信託銀行などに確認。
4. 遺言書が見つかった場合
- 公正証書遺言: そのまま相続手続きに使えます。
- 自筆証書遺言・秘密証書遺言: 家庭裁判所での「検認(けんにん)」手続きが必要です。封がされていても、決して自分で開けてはいけません。
遺言書がある場合、財産は原則としてその内容に従って分割されます。
③相続人調査
次に行うのが相続人の確定作業です。相続では、法定相続人を正確に確定しなければ、遺産分割協議を行うことができません。
相続人を確認するためには、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍を収集する必要があります。この作業は意外と手間がかかり、本籍地が複数の自治体にわたる場合もあります。
④財産調査
相続人の確定と並行して行うのが相続財産の調査です。相続財産には次のようなものがあります。
・預貯金
・不動産
・株式や投資信託
・生命保険
・自動車
・借金やローン
これらの財産を調査し、財産目録として整理することで、遺産分割の話し合いを進めることができます。
⑤遺産分割協議
相続人と財産が確定したら、相続人全員で遺産の分け方を決める遺産分割協議を行います。
遺産分割は、相続人全員の合意が必要です。一人でも反対する人がいると、協議は成立しません。
協議がまとまった場合は、遺産分割協議書を作成し、全員が署名押印します。
⑥名義変更手続き
遺産分割協議が成立したら、各財産の名義変更を行います。
主な手続きは次の通りです。
・銀行口座の名義変更
・不動産の相続登記
・自動車の名義変更
・株式の名義変更
これらの手続きを行うことで、正式に財産が相続人へ移転します。
不動産の名義変更は、司法書士しかできません。
相続手続きで必要になる主な書類
相続手続きでは、多くの書類を準備する必要があります。代表的な書類を紹介します。
主な書類は次の通りです。
・被相続人の戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・住民票
・印鑑証明書
・固定資産評価証明書
・預金残高証明書
これらの書類は、銀行や法務局などの手続きで必要になります。戸籍の収集だけでも複数の役所から取り寄せることがあり、時間がかかることがあります。
こういう厄介な手続はぜひ行政書士に任せてしまった方が楽だし正確です。
相続手続きは専門家に相談することも可能
相続手続きは複雑であるため、専門家に相談するケースも多くあります。
例えば行政書士は、次のような相続業務をサポートすることができます。
・戸籍収集
・相続人調査
・財産調査
・遺産分割協議書作成
・各種手続きの書類作成
相続人が多い場合や、財産が複雑な場合などは、専門家のサポートを利用することで手続きをスムーズに進めることができます。
まとめ
相続手続きは、普段経験することが少ないため、何から始めればよいのかわからないという方も多いものです。
しかし、基本的な流れを理解しておくことで、相続手続きをスムーズに進めることができます。
相続の主な流れは次の通りです。
1 死亡届の提出
2 遺言書の確認
3 相続人調査
4 財産調査
5 遺産分割協議
6 名義変更手続き
また、相続放棄や相続税申告など、期限が決められている手続きもあるため注意が必要です。
相続手続きは複雑になることも多いため、不安がある場合は早めに専門家へ相談することを検討するとよいでしょう。


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