特定事業所加算の研修費を補助金で軽減|介護従事者確保総合推進事業費補助金の活用方法

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特定事業所加算を取得するためには、計画的な研修の実施や人材育成体制の整備が求められます。しかし実務では、研修費用や外部講師費用、受講料などのコスト負担が事業所の課題になるケースも少なくありません。

そこで活用できるのが、「介護従事者確保総合推進事業費補助金」です。
この制度は、介護・障がい福祉分野の人材確保や定着を目的として、研修費用や人材育成にかかる費用を補助する制度であり、特定事業所加算の取得を目指す事業所にとって非常に相性のよい補助制度といえます。

本記事では、居宅介護事業所の事業主向けに、

  • 介護従事者確保総合推進事業費補助金の概要
  • 対象となる研修費用の範囲
  • 申請の流れと具体的な手続き
  • 実務上の注意点と採択難易度
  • 他の助成制度との併用可否

について、実務で活用できるレベルで詳しく解説します。

特定事業所加算の取得を進めながら、研修コストをできるだけ抑えるための実践的な参考資料としてご活用ください。

居宅介護事業所における「特定事業所加算」の取得および維持には、従業者に対する計画的な研修の実施や、サービス提供責任者等による認知症介護実践者研修などの専門性の高い研修の受講が要件として求められます。

これらの研修実施には、受講料などの直接的な経費だけでなく、職員が研修に参加している間の「代替職員の確保」や「人件費の負担」といった間接的なコストも発生し、事業所経営にとって決して小さくない負担となります。

本記事では、北海道が実施する「介護従事者確保総合推進事業費補助金」を活用し、これらのコスト負担を軽減する方法について解説します。特に、特定事業所加算の要件を満たすために有効な研修に関連する2つの事業に焦点を当て、その内容や申請のポイントを整理しました。

本補助金は、北海道が地域医療介護総合確保基金を活用し、道内の福祉・介護人材の安定的な確保・定着・育成を図ることを目的として実施しているものです。令和7年度(2025年度)は実施されており、続く令和8年度も恐らく例年通りの実施が予測されており、複数の「細事業」で構成されています。

例年の公募スケジュール(北海道)

北海道の場合、概ね次の流れです。

時期内容
4〜5月事業内容決定
5〜6月事前協議募集
6〜7月申請
夏頃交付決定

つまり

令和8年度分の募集は

👉 2026年5月〜6月頃

に出る可能性が高いです。

障がい福祉サービスの居宅介護事業所が、特定事業所加算取得のための研修費軽減として活用を検討すべきなのは、主に以下の2つの事業です。

事業名称主な対象・目的居宅介護事業所の活用可否
キャリアパス支援研修事業資格取得やスキルアップのための研修開催費用の助成△(単独申請不可・ユニット等が必要)
実務者研修等支援事業研修受講時の代替職員確保にかかる費用の助成◎(事業所単独で申請可能)

次章より、それぞれの事業の詳細について解説します。

事業の目的・概要

養成施設や事業者団体等が、介護従事者のキャリア形成を促進するための研修を実施した場合に、その研修の開催に要する費用を助成する制度です。事業所が支払う研修受講料を補助するものではなく、「研修を主催する側」への開催費補助という性質を持ちます。

補助対象となる研修の種類

  • 福祉・介護サービスに従事する者の資格取得や知識・技術力のレベルアップのための研修
  • チームリーダーや初任者等の指導的立場としての視点や技術等を習得するための研修
  • その他、人材の定着支援に資する研修として知事が認めるもの

補助率・補助額(北海道)

補助率10/10以内(定額補助)
補助基準額(上限)1事業者(ユニット):450,000円以内
※広域(複数振興局管内)、市町村・団体実施、オンライン実施の場合は750,000円以内

対象事業者(申請要件)

この事業の最大の特徴は、個別の居宅介護事業所が単独で申請することができない点です。申請主体は以下のいずれかである必要があります。

  1. 介護福祉士養成施設等を設置する者
  2. 市町村
  3. 福祉・介護に係る事業者団体及び職能団体
  4. ユニット(5つ以上の福祉・介護サービスに係る施設・事業所で構成されるグループ)

一般の事業所が活用する場合、近隣の事業所と連携して「ユニット」を形成する必要があります。ユニットの構成には、「在宅サービスで定員20人以下の事業所」等の要件が含まれる場合があります。

申請難易度:★★★★☆(難)

単独での申請が認められていないため、地域の他事業所との連携調整や協定書の締結など、事務的なハードルが高いのが現状です。ただし、地域の事業者連絡協議会などが申請主体となっている場合、その研修に参加することでメリットを享受できる可能性があります。

※特定事業所加算を目指す居宅介護事業所にとって、最も現実的かつ効果的なのがこの事業です。

事業の目的・概要

福祉・介護サービス事業者が、現在雇用している職員に特定の研修を受講させる際、その職員が不在となる間の業務をカバーするための「代替職員」を確保するために要した費用を助成する制度です。研修費そのものではなく、研修中の人手不足を補うコストを支援します。

補助対象となる研修の種類

特定事業所加算の要件に関わる重要な研修が含まれています。

  • 介護福祉士実務者研修
  • 介護職員初任者研修
  • 喀痰吸引等研修
  • 認知症介護実践者研修(特定事業所加算の加算要件に関連)
  • 認知症介護実践リーダー研修(サービス提供責任者の要件等に関連)
  • 生活援助従事者研修

補助対象経費

研修受講期間中に確保した代替職員に係る費用が対象です。

  • 代替職員を新たに雇用した場合の給与・賃金
  • 派遣職員を依頼した場合の派遣料
  • 既に雇用している非常勤職員の勤務日・時間を増やして対応した場合の増額分賃金

補助率・補助額(北海道)

補助率10/10以内(定額補助)
補助基準額(上限)1事業者あたり:570,000円以内

対象事業者

福祉・介護サービス事業者(その他知事が適当と認める団体)
※居宅介護事業所が単独で申請可能です。

申請難易度:★★☆☆☆(比較的容易)

事業所単独で申請・受給が完結するため、手続きの負担は比較的軽微です。特定事業所加算のために職員を研修に出す必要がある場合、その間のシフト穴埋めにかかるコスト(非常勤の増員等)をほぼ全額カバーできるため、非常に使い勝手の良い制度と言えます。

本補助金は、事前の協議から交付決定まで厳格なスケジュール管理が求められます。例年の流れは以下の通りです。

STEP 1:事業実施協議(事前協議)書の提出

時期:例年4月~6月中旬頃(期限厳守)
北海道庁または各振興局へ「今年度、この補助金を使いたい」という計画書(協議書)を提出します。これが事実上のエントリーとなります。法人本部が札幌市内の場合は道庁へ、それ以外は各振興局が窓口となることが一般的です。

STEP 2:内示(補助予定額の通知)

時期:例年7月頃
道庁にて予算調整が行われ、採択された場合は内示通知が届きます。予算枠を超えた応募があった場合、希望額より減額される可能性があります。

STEP 3:交付申請書の提出

時期:内示受領後、指定期日まで
内示に基づき、正式な交付申請書を提出します。この手続きを経て「交付決定」がなされます。

STEP 4:事業(研修・代替職員配置)の実施

時期:交付決定後~年度末
実際に職員を研修に行かせ、代替職員を配置します。出勤簿、賃金台帳、派遣契約書、研修修了証などの証拠書類を確実に整備・保存してください。

STEP 5:実績報告・補助金の請求

時期:事業完了後(年度末まで)
実際に要した経費を集計し、実績報告書を提出します。審査完了後、指定口座に補助金が振り込まれます。

【重要】以下の点に注意しなければ、補助金が受給できない場合があります。

  1. 交付決定前の経費は対象外
    原則として、交付決定(指令)日より前に発生した経費(研修受講や代替職員の勤務)は補助対象外となります。研修スケジュールを組む際は、7月~8月以降の実施を想定する必要があります。
  2. 研修受講料そのものは対象外(実務者研修等支援事業)
    実務者研修等支援事業で補助されるのは「代替職員の人件費」であり、研修の受講料や交通費は対象外です。
  3. 障がい福祉サービス事業所としての適用確認
    本補助金は介護保険財源(地域医療介護総合確保基金)を用いていますが、障がい福祉サービス事業所も「福祉・介護サービス事業者」として対象となるケースが一般的です。ただし、念のため管轄の振興局へ適用の可否を事前に確認することを強く推奨します。
  4. 予算超過時の調整
    申請額が道の予算を超えた場合、一律にカットされるなど、満額支給されない可能性があります。
  5. 証拠書類の整備
    「誰が研修に行き、その代わりに誰がいつ勤務したか」が明確に分かるシフト表や日誌が必要です。通常の勤務と代替勤務が区別できるよう管理してください。
  6. 他の補助金との重複禁止
    同一の経費(同じ時間の代替職員賃金など)に対して、国や市町村の他の補助金を二重取りすることはできません。

「実務者研修等支援事業」では研修受講料自体は出ませんが、他の制度と組み合わせることで、さらなる負担軽減が可能です。

(1) 人材開発支援助成金(厚生労働省・労働局)

雇用保険適用事業所であれば活用可能です。「特定訓練コース」などを利用すれば、研修受講料の一部および研修期間中の賃金の一部が助成されます。

【組み合わせイメージ】
北海道の補助金で「代替職員の人件費」をカバーし、厚労省の助成金で「受講料」と「本人の賃金」をカバーする。対象経費が異なるため、理論上併用による相乗効果が期待できます(※要件確認必須)。

(2) キャリアアップ助成金(厚生労働省・労働局)

非正規雇用の職員が正社員化を目指して研修を受ける場合などに活用できます。

(3) 市町村独自の研修費補助

北海道内の一部の市町村(室蘭市、旭川市など)では、独自に介護職員初任者研修等の受講料補助を行っている場合があります。事業所所在地に制度があるか確認してください。

組み合わせNG例

  • × 北海道の実務者研修等支援事業(代替職員費)と、国の業務改善助成金(賃金引上げ支援)で、同じ職員の同じ時間の賃金を対象として申請すること。
4月~5月【情報収集・計画】
・北海道庁HPで公募開始を確認
・特定事業所加算の要件を確認し、誰にどの研修(認知症実践者研修等)を受けさせるか決定
・代替職員(非常勤の増員等)の確保計画策定
6月中旬【申請(協議)】
・振興局等へ「事業実施協議書」を提出
7月~8月【決定・開始】
・内示通知および交付決定通知を受領
・研修受講開始、代替職員の勤務開始
~翌年3月【実績報告】
・事業完了後、実績報告書を提出し補助金を受領
・特定事業所加算の届出(体制届)に必要な研修修了証を確保

特定事業所加算の取得は、報酬単価のアップだけでなく、質の高い人材の確保や事業所のブランド力向上にも繋がります。しかし、そのための研修コストは経営を圧迫する要因となりがちです。

今回ご紹介した北海道の「実務者研修等支援事業」は、事業所単独で申請でき、かつ補助率10/10(全額補助)という非常に手厚い制度です。特に、加算要件となる「認知症介護実践者研修」や「実務者研修」への職員派遣に伴う現場の負担(代替要員コスト)をカバーできる点は、大きなメリットです。

申請期限が例年6月中旬と早いため、新年度が始まったらすぐに準備に着手することが重要です。貴事業所のさらなる発展と加算取得に向け、本制度を有効に活用してください。

【参考URL・問い合わせ先】

※本資料は令和7年(2025年)度の公募情報を基に作成しています。最新の情報は必ず北海道庁および各振興局の公式発表をご確認ください。

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