建設業許可について調べ始めたとき、多くの方が最初につまずくのは、
「情報はたくさんあるのに、全体像がつかめない」という点ではないでしょうか。
インターネット上には、
- 500万円未満なら許可はいらない
- 一般建設業と特定建設業がある
- 業種が29種類に分かれている
- 知事許可と大臣許可がある
といった情報が数多く出てきます。
しかし、それらを一通り読んでも、
- それぞれがどうつながっているのか
- どれが先に判断すべき話なのか
- 自分の事業では何が問題になりそうなのか
が見えないまま、
知識だけが断片的に増えていく状態になりがちです。
この記事では、そうした状態を避けるために、
建設業許可制度を「細かい要件」ではなく
制度全体の構造(骨組み)から整理して解説します。
このページは、今後詳しく解説していく
業種・金額基準・一般と特定・許可要件といった個別テーマ記事を
正しく理解するための 前提となる地図・ハブ記事 です。
まずはここで、
建設業許可制度の全体像を頭の中に描いていきましょう。
建設業許可とは何か|制度の位置づけを理解する
前回の記事でも書いたのですが、
大事なことなのでもう一度お伝えしたいと思います。
建設業許可とは、
一定規模以上の建設工事を請け負うために必要となる公的な営業許可です。
この制度は「建設業法」に基づいて設けられており、
建設工事という社会的影響の大きい事業について、
- 誰が
- どのような体制で
- どの規模の工事を
行ってよいのかを、あらかじめ国や都道府県がチェックする仕組みになっています。
建設工事は、完成後に問題が発覚すると、
- 人命に関わる事故につながる
- 高額な損害賠償問題になる
- 発注者や利用者に長期的な不利益を与える
といった深刻な結果を招く可能性があります。
そのため国は、
- 一定の経験・知識を持つ人が経営に関与しているか
- 技術的な責任を負える体制があるか
- 最低限の経営基盤があるか
といった点を事前に確認し、
「この事業者であれば建設工事を任せてもよい」と判断した場合にのみ
建設業許可を与えています。
国土交通省の検索システムを見ると制度の全体像が見える
建設業許可制度を理解するうえで、
非常に参考になるのが 国土交通省の建設業者検索システム です。
↓国土交通省 建設業者検索システム
https://etsuran2.mlit.go.jp/TAKKEN/kensetuKensaku.do?outPutKbn=1

この画面は実際の国土交通省の公式サイトの画像です。
すでに建設業許可を取得している業者であれば、
この検索システムに業者名を打ち込むと、
- 許可番号
- 許可行政庁
- 業種
- 一般/特定の区分
- 有効期間
といった、建設業許可制度を構成する要素がすべて表示されます。
ちなみに、検索業者名には既に「清水建設」と打ち込んでおきました。
この状態で検索をすると、次の結果が表示されます。

さすが日本最王手のゼネコンの1つですね。
日本全国に清水建設の視点があるようです。
どこか1つ、視点をクリックしてみましょう。
すると、このように詳しい内容が表示されます。
ちなみに、この情報は全て国土交通省によって公開されているもので、
誰でも閲覧することが出来ます。

今回の記事では、
これから建設業許可を取りたいと考えている事業主の方や、
取扱業務として建設業許可をやっていきたいとお考えの行政書士の方に向けて、
許可申請のための基本的知識をまとめてみたいと思っております。
3回ほどの記事を通じて、
上記の画面に書かれていることがパッと見てほぼほぼ理解できる、
そういうレベルにまずはなっていただければ、
実際にご自身の扱いたい業種の工事には許可が必要なのかどうか、
どこに申請すればよいのかがわかるようになると思います。
今回の記事の目標:
この画面を見て「何が書いてあるか分かる状態」
= 建設業許可制度の全体像を理解している状態
建設業許可制度についてのイロハのイと言っても過言ではありません。
では、始めていきましょう!
建設業許可番号とは|事業者ごとに1つ付与される番号
まずは簡単なところの説明からです。
当たり前のことですが、
建設業許可を受けると、
事業者には 建設業許可番号 が付与されます。
この番号は、
- 事務所ごとではない
- 支店ごとでもない
- 事業者(法人・個人)ごとに1つ
という点が重要です。
清水建設さんで言うと、
| 許可番号 | 国土交通大臣許可 第003200号 |
|---|
と表示されていることがわかります。
特徴的なことは、
全国に多数の支店を持つ大手建設会社であっても、
許可番号が事務所ごとに乱立することはありません。
どの支店に対する許可番号も、
部国土交通大臣許可 第003200号
ですよね。
これが、まず1つ目の、知識。
建設業許可番号です。
知事許可と大臣許可の違い|上下関係ではない
しかし、この許可番号もよく見ると、
番号の前に「国土交通大臣」と書いてあることに気が付くと思います。
ここでちょっと、別な検索結果ご覧ください。
同じく清水建設の情報です。

先程の検索結果画面と見比べてください。
違いがわかりますでしょうか?
まず、色々な県が表示されており、会社名もシミズ建設関連だというのはわかりますが、
どうやら本社ではないような感じですよね。
そして、何よりも注目すべきポイントは、
「許可番号」がバラバラだということです。
先程はすべて共通の番号でしたが、今回の検索結果では、
逆に全ての会社で許可番号が異なっています。
なぜこんなことになっているのでしょうか?
ここに次の知識の本質が現れています。
一言で説明すると、
建設業許可には、
- 国土交通大臣許可
- 都道府県知事許可
の2種類があるということです。
この2つの許可番号には 優劣の違いはなく、管轄の違い にすぎません。
では、どんな違いなのか?
判断基準は「営業所の所在地」
- 複数の都道府県に営業所がある
→ 大臣許可 - 1つの都道府県内のみ
→ 知事許可
注意すべきことは、「工事を行う場所」ではなく、
「営業所の所在する場所」で判断されるということです。
もう一つは、実際に工事を行う営業所がどこにあるのかで考えます。
つまり、
- 本社は東京
- 工事を行う営業所は千葉
であるならば、千葉県知事から許可を出してもらいます。
本社のある東京都ではないんですね。
これが許可番号が共通で1つしかないのか、
営業所ごとの支店ごとにバラバラなのかの違いになっているわけです。
建設業許可の業種とは|29種類に分かれる理由
建設業許可は、
「建設業一括」で取得できるものではありません。
建設業法では、工事内容に応じて
29種類の業種 に細分化されています。
これは、
- 必要な技術
- 経験
- 管理体制
が工事内容によって大きく異なるためです。
自社が請け負う工事が
どの業種に該当するのかを誤ると、
許可を持っていても違法になる可能性があります。
ですので、この部分についてはかなり詳しく説明したいと思います。
まず、ご存じの通り建設工事と一言で言っても、
施工内容によって必要な知識・技術や経験っていうのは全く異なります。
例えば、
足場を組む工事と、
港の水底をさらう工事。
これは両社とも建設業に該当しますが
施工内容必要な技術は全く異なります。
そこで、工事の種類によって適切な施工体制を確保できるようにし、
建設業法で工事を29種類に細分化するということになりました。
この細分化した工事の種類が、いわゆる「業種」と言われております。
では、全29業種をリストアップすると以下の通りです。
ご自身が扱おうと考えている業種はどれに充てはあるか分かりますか?
1.土木一式工事
2.建築一式工事
3.大工工事
4.左官工事
5.とび・土木・コンクリート工事
6.石工事
7.屋根工事
8.電気工事
9.管工事
10.タイル・れんが・ブロック工事
11.鋼構造物工事
12.鉄筋工事
13.舗装工事
14.しゅんせつ工事
15.板金工事
16.ガラス工事
17.塗装工事
18.防水工事
19.内装仕上工事
20.機械器具設置工事
21.熱絶縁工事
22.電気通信工事
23.造園工事
24.さく井工事
25.建具工事
26.水道施設工事
27.消防施設工事
28.清掃施設工事
29.解体工事
まず自社で施工する業種を29種類のうちから特定し、
その業種の建設業許可が取れるのかどうか、これを精査することが許可院生を理解するうえで必要になります。
これが、
建設業許可を進めていく上で、とても大事なことになってくるからです。
突然ですが、ここで皆さんに質問があります!
建設業法では、許可を取得しないで請け負うと違法になる工事の請負金額の基準があります。
さて、その金額はご存知ですか?
原則、請負金額が税込500万円以上になる工事ですね。
この違法になるかどうかも、この業種によって判断します。
どういうことかというと、
例えば、
大工工事業の建設業許可を持っている建設業者さんは、
税込1000万円の木工建設工事を受けることができます。
なぜなら、
この業者さんは、「大工工事業の許可」を持っているから、
上限規制の500万円以上の工事を請け負うことが出来るからです。
では、同じくこの業者さんは、
ついでに税込み請負金額で約700万円の内装の工事について、
この業者は工事を受けられるのでしょうか?
これは受けることができませんよね。
なぜなら内装工事の施工は、
原則、「内装仕上工事業」に分類されるからです。
この業者さんはその業種の許可は持っていませんでした。
もしこの工事も受けたいのであれば、
大工工事業だけではなく、内装仕上工事業の許可も取りましょう。
大事なことは自社で請け負い施工する工事に該当する業種の建設業許可を持っているかどうかです。
これが「適法・違法」の基準です!
さて、それを踏まえて清水建設さんの許可業種について確認しましょう。

この記事を書いている
2026年2月の時点で、
清水建設さんは、大臣許可については、
なんと29業種中の28種もの業種の許可を取得してます!
取っていないのは「清掃業」だけですね。
しかも、取得している許可のうち、
ほぼ全てが特定建設業での許可となっております。
さすがスーパーゼネコンですね。
建設業法上、
業種は全部で29種類あり、業種に対応した工事に該当する許可を取得しなければいけません。
では、それはどのようにして調べるのか、
疑問に思った方もいらっしゃると思います。
もちろんこれらの業種の判断基準についても、
国土交通省の公式サイトに公開されております。
↓国土交通省 業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方
https://www.mlit.go.jp/common/001209751.pdf
そうは言っても、ご自身の取りたい業種がどれなのか、よくわからないと感じたのならば、
無理せずプロに相談しましょう。それが間違いの無い一番の方法です。
↓筆者の事務所ホームページを掲載しておきますので、
もし必要であればお気軽にご相談ください。
▶ 業種の具体的な判断方法については
記事②:業種と500万円基準の判断 で詳しく解説します。
建設業許可が必要になる金額基準
建設業法では、
請負金額が一定額を超える工事を請け負う場合に、
原則として建設業許可が必要になります。
- 建築一式工事:1,500万円以上
- それ以外の工事:500万円以上
ここでいう請負金額は、
材料費・人件費をすべて含めた金額です。
また、形式的に金額を分割していても、
実態として一体の工事と判断されれば
無許可営業になる可能性があります。
一般建設業と特定建設業|制度の考え方だけ押さえる
検索システムでは、
業種の下に「1」や「2」という数字が表示されているのがわかりますか?

この数字は、
1=一般建設業
2=特定建設業という「区分」を表しております。
何が違うのかというと、
- 元請として工事を請け負うか
- 下請にいくら以上の工事を出すか
という 工事の請負の仕方 によって一般なのか特定なのかが決まります。
ここまで記事の説明で、
建設業許可は自社で受けを工事が税込500万円以上になる場合に必要だと、
説明してきました。
税込請負金額が500万円以上の工事を受けるにあたり、
自社だけで施工することもあると思いますが、
下請け業者と協力して工事を施行することもありますよね?
これは、工事の請負金額が大きくなるにつれて
下請業者さんが増えていく傾向があると思います。
特に大規模な工事を完成させようとすると、
複数の工事業者が関係していくという意味合いです。
そうすると、建設業という工事の特性上、
工事の発注者と直接請負契約を結ぶ元請負業者の責任が重たくなっていくという構図は理解しやすいですよね?
なぜなら、
工事現場で下請け業者に指示を出すのは、元請業者の技術者だからです。
また、
下請け業者が施工した工事の代金の大元を支払うのも、元請け業者だからです。
そうなると、
元請業者は下請業者よりも相当厳しい許可基準を課す必要があるという結果になります。
これが「一般建設業」と「特定建設業」の根本的な考え方です。
復習として、まず理解しやすい方から説明します。
一般は、
税込500万円以上の工事を請け負う場合に必要な許可区分です。
今まで説明してきたものですね。
それに対し、
特定は、
次の条件を満たす工事を請け負う場合に必要な許可区分です。
・実行時の発注者から直接請負う
・直接請負った1件の工事代金を、
下請業者に4000万円以上出す。
つまり、特定の許可区分が必要な建設業者は、
「元請業者のみ」ということになります。
元請業者のみ、かつ、4000万円以上の下請け工事を結ぶ。
こういった事業者は特定建設業の許可が必須となります。
もし自社が元請けとして工事を受けることが絶対にないのであれば、
一般の許可区分だけで十分と言えます。
また、この一般と特定も業種ごとに区分します。
例えば、
内装仕上工事業は元請けとして大きな工事を施工するから特定が必要だけど、
消防施設工事業はそもそも4000万円を超す工事を受けないというのであれば、
一般で大丈夫。
こういう風な考え方です。
さてここで再び清水建設さんの情報を見てみると、
さく井工事と消防設備工事だけは一般建設業での許可を取得し、
それ以外は特定建設業での許可区分となっていることがわかります。
特定建設業は、
元請として大規模工事を統括する立場の事業者向けの区分であり、
一般建設業よりも厳しい要件が課されます。
▶ 詳細は
記事③:一般建設業と特定建設業の違い で解説します。
建設業許可の有効期間と更新
次に、許可の有効期間について説明します。
国土交通省の検索システムで調べてみると、
清水建設さんは、
令和7年2月19日に許可を受けたことが確認できます。

ちなみに、
建設業の許可の有効期限は業種や区分に関係なく、一律で5年です。
ですので、
清水建設さんの建設業許可は、
令和12年2月18日までに更新手続きをしなければいけないということになります。
建設業許可は取得して終わりではない
建設業許可は、
取得して終わりの制度ではありません。
実務では、
- 毎年の決算変更届
- 5年ごとの更新
- 各種変更届
- 経営事項審査
といった継続的な手続きが発生します。
この点を理解せずに許可を取得すると、
後から「こんなに手続きがあるとは思わなかった」と
負担に感じることになります。
建設業許可が必要かどうかの判断は、
事業の方向性そのものに大きく影響します。
「今すぐ依頼するかは決めていない」
「まずは自分の状況を整理したい」
その段階でも問題ありません。
まとめ|まずは制度の「全体像」を頭に入れる
建設業許可を正しく理解するために、
最初に押さえるべきなのは細かい要件ではありません。
- 許可番号
- 許可行政庁
- 業種
- 一般/特定
- 有効期間
という 制度の骨組み を理解することが重要です。
この全体像が頭に入っていれば、
今後どんな個別論点が出てきても、
「今どこの話をしているのか」が分かるようになります。
▶次回予告
この記事では、
建設業許可制度の**全体像(地図)**を整理しました。
次に多くの方がつまずくのが、
- 自分の工事は「どの業種」に当たるのか
- 500万円基準は、どこまで厳密に判断されるのか
- 「許可が要らない」と思っていた工事が、実は危険なケースではないか
といった 実務判断のライン です。
次回の記事②では、次のテーマを詳しく解説します。
- 建設業許可の「業種」とは何か
- 29業種の考え方と間違いやすい分類例
- 500万円基準の本当の意味
- 「大丈夫だと思っていたら違法になる」典型パターン
▶ 記事②:建設業許可の業種と500万円基準|違法になる境界線を整理する


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