担当している利用者さんの中に、「親族の所在がよく分からない」「持ち家があるが今後どうするか決まっていない」といったケースはありませんか?
現場では、「とりあえず何かあれば後見」という認識で進められてしまうことも少なくありません。しかし実際には、本人の判断能力があるうちにしかできない重要な準備が数多く存在します。
例えば、任意後見契約や死後事務委任、公正証書遺言の作成、さらには医療や終末期に関する意思表示などは、“今だからこそできる支援”です。
一方で、ケアマネジャーの中には「こうした手続きはどの士業に相談すればいいのか分からない」「社労士や司法書士に頼めばよいのでは?」といった認識のズレがあるのも現実です。
本記事では、ケアマネジャーの方を対象に、行政書士と連携することで実現できる支援内容や、
・判断能力があるうちに進める「移行型支援」
・緊急時に対応する「即効型支援」
親族不明×持ち家の高齢者対応で起きる“現場の限界”
ケアマネジャーとして日々利用者支援に関わる中で、「親族がはっきりしない高齢者」を担当するケースは決して珍しくないのではないでしょうか。実際にわたしの周りのケアマネさんからもこういった悩ましい問題はよく耳にします。
さらにその方が持ち家を所有している場合、問題は一気に複雑になります。
例えば、次のような課題が現場で発生します。
- 本人の判断能力が低下し、契約や手続きが進められない
- 固定資産税や光熱費などの支払いが滞る
- 空き家化による近隣トラブルのリスク
- 将来的な相続や財産処理の見通しが立たない
これらは単なる介護の問題ではなく、「法律・財産・生活」が絡み合った問題です。
しかし現実には、「どの専門家に相談すべきか分からない」という理由で、対応が後手に回ってしまうケースが多く見られます。
よくある誤解|士業の役割が整理されていない
現場でよくあるのが、
「こういうのは社労士に相談すればいいのでは?」
「とりあえず司法書士?」
といった“なんとなくの依頼”です。
しかし、それぞれの士業には明確な役割があります。
社労士・司法書士・弁護士との違い
- 社労士:労務・社会保険の専門家(介護・財産問題は対象外)
- 司法書士:登記・不動産・相続登記の専門家
- 弁護士:紛争・法律判断・代理交渉
では、今回のような「親族不明×持ち家×今後の生活設計」のケースは誰が担うのか。
そこで重要になるのが、行政書士の役割です。
行政書士と連携することでできること
行政書士は、いわゆる“許認可だけの専門家”ではありません。
この分野では、
👉「生活・財産・将来設計をつなぐ実務のハブ」
として機能します。
判断能力があるうちにできる支援(移行型支援)
利用者さんの意識がはっきりしている段階であれば、将来に備えた準備が可能です。
代表的なものが以下です。
- 任意後見契約
- 死後事務委任契約
- 公正証書遺言の作成
- 尊厳死宣言の公正証書作成
これらはすべて、
👉 「判断能力があるうちにしかできない」
重要な手続きです。
特に任意後見契約は、将来認知症になった場合に備え、自分で後見人を選べる制度であり、早期に検討することで本人の意思を最大限尊重できます。
緊急時に対応する支援(即効型支援)
すでに判断能力が低下している、または急な対応が必要な場合は、スピードが求められます。
- 成年後見制度の申立て準備
- 戸籍収集による親族調査
- 財産状況の整理
- 関係機関との連携(自治体・包括)
このような場面では、
👉 「何から手をつけるべきか分からない」
という状態になりがちですが、行政書士が入ることで全体像が整理され、次の一手が明確になります。
任意後見だけではない|支援の“組み合わせ”が重要
現場でありがちな誤解として、
「任意後見をやれば安心」
「後見をつければ全部解決」
というものがあります。
しかし実際には、
👉 制度の“組み合わせ”が重要
です。
具体的な組み合わせ例
例えば、次のような設計が考えられます。
- 任意後見契約 + 財産管理契約(今すぐの支援)
- 任意後見契約 + 死後事務委任(亡くなった後の対応)
- 公正証書遺言 + 任意後見(財産の意思表示+管理)
これにより、
- 生前の生活支援
- 判断能力低下後の財産管理
- 死後の手続き
まで一貫した支援が可能になります。
👉 ケアマネがこの視点を持っているかどうかで、利用者の将来は大きく変わります。
実務の進め方|ケアマネが取るべきアクション
では、実際にどう動けばよいのでしょうか。
現場で使える流れを整理します。
STEP1 違和感を見逃さない
- 親族と連絡が取れない
- 金銭管理が不安定
- 将来の話ができていない
👉 この段階が“動くべきタイミング”です
STEP2 早期に行政書士へ相談
状況が悪化してからでは選択肢が減ります。
👉 判断能力があるうちに相談することで
「移行型支援」が可能になります
STEP3 利用者本人の意思確認
- 誰に任せたいか
- 自宅をどうしたいか
- 最期の医療や生活の希望
👉 これを言語化・書面化することが重要です
STEP4 制度設計と契約
- 任意後見契約
- 死後事務委任
- 遺言
👉 必要なものを組み合わせて設計
STEP5 継続的な見守りと調整
契約して終わりではなく、
- 状況変化への対応
- 関係者との連携
- 実務のフォロー
が重要です。
まとめ|ケアマネの一言で将来が変わる
親族不明で持ち家がある高齢者の支援は、
👉 「問題が起きてから対応する」のでは遅いケース
が多くあります。
重要なのは、
- 判断能力があるうちに動く
- 適切な専門家につなぐ
- 制度を組み合わせて設計する
という視点です。
そしてその中心にいるのがケアマネジャーです。
「こういう方法もありますよ」と一言伝えるだけで、
👉 利用者の将来の安心は大きく変わります。
行政書士との連携は、単なる手続き依頼ではなく、
利用者の人生設計を支えるための重要な選択肢のひとつです。

