建設キャリアアップシステム(CCUS)のレベル評価は、単なる記録制度ではなく、人材育成や配置判断に活用できる仕組みです。本記事では、技能レベル情報を現場や経営の視点でどう活かすかを実務的に解説します。
CCUSと技能レベル評価の基礎知識
【このブロックのポイント】
- CCUSは技能者の「経験」と「資格」を可視化する業界共通のシステムです。
- レベル評価は4段階あり、客観的な基準で技能者の実力を証明します。
- 自社の人材レベルを把握することが、育成と配置の第一歩です。
CCUSとは何か(簡潔に)
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者一人ひとりの就業履歴や保有資格をICカードを通じて個別に登録・蓄積する仕組みです。
これまで口頭や紙ベースで管理されていた「どの現場で、どんな作業を、どれくらいの期間経験したか」という情報がデジタル化され、業界統一のルールで管理されるようになります。これにより、技能者の適正な評価と処遇改善につなげることを目的としています。
技能レベル評価制度の概要
技能レベル評価制度は、CCUSに蓄積されたデータ(保有資格、就業日数、職長経験など)に基づき、技能者の能力を4段階で評価する仕組みです。評価結果はカードの色(ホワイト、ブルー、シルバー、ゴールド)で識別されます。

レベル1~4の評価基準と判定要件
各職種(現在49分野※)ごとに詳細な基準がありますが、大まかな共通基準は以下の通りです。
※令和7年12月時点での見込み含む。最新の職種数は各団体HPを確認ください。
ちなみに、ここで言う49職種というのは、建設業許可29業種の事ではありません。
非常に分かりにくいのですが、技能者(個人)の職種区分を指しています。
こちらは技能者個人の能力評価区分です。
🔹 29業種と49分野の違い
| 項目 | 29業種 | 49分野 |
|---|---|---|
| 制度 | 建設業許可制度 | 建設キャリアアップシステム |
| 対象 | 会社(法人) | 技能者(個人) |
| 目的 | 営業許可 | 技能レベル評価 |
| 区分数 | 29 | 約49(今後増減あり) |
つまり、
29業種 = 会社の営業許可区分
49分野 = 職人さんの技能レベル区分
という全く別の制度です。
それを踏まえて、次の説明に移ります。

なぜ人材育成に活用すべきなのか?
これまで感覚的だった「一人前」の定義が明確になります。「あと何日経験すればレベルアップできるか」「次に取るべき資格は何か」が可視化されるため、会社と技能者が同じ目標を共有しやすくなり、離職防止やモチベーション向上に直結します。
レベル評価を活かした配置判断の実務
【このブロックのポイント】
- レベルごとの「期待される役割」を社内で定義しましょう。
- 現場の難易度や規模に応じて、各レベルの人員バランスを考慮します。
- 配置基準を明確にすることで、現場監督の負担を軽減できます。
レベル別の配置基準の考え方
単に「手が空いている人」を配置するのではなく、現場の要求品質や工期、難易度に合わせてレベル別の配置を行います。これにより、施工品質の安定化と若手育成の両立を図ります。
レベルに応じた役割分担の設定方法(例)
以下は、一般的な専門工事会社における役割分担のモデルです。自社の状況に合わせて調整してください。

配置判断のチェックリスト
新しい現場の人員配置を行う際、実務担当者が確認すべき項目です。
【現場配置チェックリスト】
- その現場に「職長」として配置できるレベル3以上の技能者はいるか?
- 施工難易度が高い工程に、経験豊富なレベル3・4を充てているか?
- レベル1(新人)に対し、指導役となるレベル2・3がペアになっているか?(OJT体制)
- レベル2の技能者に対し、職長業務の一部を任せるなど「レベル3へのステップアップ」の機会を与えているか?
- 特定の現場に高レベル技能者が偏りすぎていないか?(全社的なバランス)
- CCUSのカードリーダー設置など、就業履歴蓄積の環境は整っているか?
💡実務アドバイス:
公共工事や大手ゼネコンの現場では、CCUS登録技能者の入場率やレベル別技能者の配置が評価対象(加点)となるケースが増えています。配置計画段階で、元請の要望を確認しましょう。
教育計画への活用方法
【この章のポイント】
- 「いつまでに」「何の資格を取るか」を明確にしたキャリアパスを作成します。
- CCUSのデータを活用して、不足している経験日数を把握します。
- 助成金を活用して、コストを抑えながら資格取得を推進しましょう。
レベル別の教育計画の立て方
CCUSのレベル判定基準は、そのまま教育カリキュラムの骨子になります。漠然と「頑張れ」と言うのではなく、「レベル2になるために、あと〇日の経験と、この資格が必要だ」と具体的に示します。
教育計画のサンプル(鉄筋工事の例)

経験年数と就業日数の目標設定
レベル判定には「就業日数」が必須です。会社側は、技能者が着実に日数を蓄積できるよう、現場でのカードタッチを徹底させる必要があります。
- 日々の管理: 現場入場時のタッチ漏れがないか確認する。
- 定期確認: 半年に1回程度、マイページで蓄積日数を確認し、本人にフィードバックする。
助成金の活用方法
資格取得や教育訓練にはコストがかかりますが、国(厚生労働省)の「人材開発支援助成金」などを活用できる場合があります。
- 人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース): 技能講習や特別教育を受講させた場合に、経費や賃金の一部が助成されます。
- CCUSレベル判定手数料への補助を行っている自治体や業界団体もあります。所属団体に確認しましょう。
評価結果の活用と処遇改善
【このブロックのポイント】
- レベルアップを賃金に反映させることで、制度の納得感が高まります。
- レベル3・4の技能者は、会社の経営事項審査(経審)の点数アップに貢献します。
- 「見える化」は若手のモチベーション維持に不可欠です。
レベル評価を賃金・手当に反映する方法
技能レベルと給与体系を連動させることで、技能者の意欲を引き出します。
【反映のパターン例】
- 資格手当として支給: 「レベル3認定手当:月額1万円」など、明確な手当を設ける。
- 日当への上乗せ: 「レベル2になったら日当+500円」など、基本給のベースアップ基準にする。
- 賞与査定への反映: 評価期間中にレベルアップした場合、賞与で評価する。
経営事項審査(経審)での加点メリット
公共工事の入札参加資格を得るための「経営事項審査」において、CCUSのレベル判定を受けた技能者の雇用状況が評価対象(Z点:社会性等)になります。
経営事項審査における「知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況」
- レベル4 技能者: 3点
- レベル3 技能者: 2点
- レベル1・2 技能者: 1点(※令和5年改正で新設された加点項目に影響する場合あり)
※点数は比率計算等により算出されます。詳細は専門家にご確認ください。
レベルの高い技能者を多く雇用することで、会社の技術力評価が上がり、公共工事の受注機会拡大につながります。
モチベーション向上につなげる工夫
金銭面だけでなく、「認められる」ことによるモチベーション向上も重要です。
- カードの掲示: ヘルメットにレベルごとのステッカーを貼る、社内に有資格者一覧を掲示するなど。
- 表彰制度: レベルアップした社員を社内報や全体会議で表彰する。
- キャリア面談: 定期的に面談を行い、「次はいつレベルアップ申請をするか」を話し合う。
実務導入のステップとポイント
【このブロックのポイント】
- まずは自社の登録(事業者登録)と、社員の登録(技能者登録)が必要です。
- 能力評価を受けるには「詳細型」での登録が必要です。
- 「経歴証明」を活用すれば、過去の経験も評価に算入できます。
導入の進め方(ステップ1~5)
STEP 1: 事業者登録
会社としての情報をCCUSに登録します。建設業許可証などが必要です。
STEP 2: 技能者登録(※重要:詳細型を選択)
技能者個人の情報を登録します。能力評価(レベル判定)を受けるためには、本人確認書類や資格証明書の添付が必要な「詳細型」での登録が必須です。「簡略型」ではレベル判定を受けられません。
STEP 3: 就業履歴の蓄積開始
現場に設置されたカードリーダー等でタッチを行い、日々のデータを蓄積します。
STEP 4: 能力評価(レベル判定)申請
基準(経験日数や資格)を満たしたら、各能力評価実施団体へレベル判定を申請します。
※令和7年3月より、技能者登録(新規)と能力評価申請の同時申込(ワンストップ申請)が可能になりました。
STEP 5: カード更新・処遇反映
新しい色のカードが届いたら、会社の手当等に反映させます。
よくある課題と解決策

経歴証明の活用方法
CCUS運用開始前の実務経験については、所属事業者が証明書を作成することで「みなし経験年数」としてカウントできます。これにより、ベテラン技能者がいきなりレベル3・4からスタートできる可能性があります。
注意点:
経歴証明書には、事業主の実印押印や印鑑証明書等が必要になる場合があります。虚偽の証明は処罰の対象となるため、正確に記載してください。
実務Q&A
Q1. レベル判定の申請から結果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. 申請先の能力評価実施団体や時期によりますが、概ね1ヶ月~2ヶ月程度かかるケースが一般的です。書類不備があるとさらに時間がかかるため、余裕を持って申請しましょう。
Q2. 申請にかかる費用は誰が負担すべきですか?
A. 制度上は「申請者(技能者)」の負担となりますが、人材育成の一環として会社が全額または一部を負担するケースが増えています。福利厚生費や研修費として処理することが一般的です(税理士にご確認ください)。
Q3. 一人親方の場合はどうなりますか?
A. 一人親方も、個人事業主として「事業者登録」と「技能者登録」の両方を行うことで、能力評価を受けられます。元請との契約関係を明確にするためにも登録が推奨されます。
Q4. 複数の職種(例:とび工と土工)で仕事をしている場合、評価はどうなりますか?
A. 複数の職種についてそれぞれ能力評価を受けることが可能です。ただし、カードは最も高いレベルの色が反映されます(裏面等で詳細を確認可能)。職種ごとに求められる資格が異なるため、それぞれの基準を確認してください。
Q5. 一度上がったレベルが下がる(降格する)ことはありますか?
A. 原則として、一度認定されたレベルが自動的に下がることはありません。ただし、カードの有効期限(10年)更新時に手続きが必要です。また、虚偽申請等が発覚した場合は取り消される可能性があります。
参考資料
関連Webサイト・問い合わせ先
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)公式ポータル
登録申請、システムログイン、各種マニュアル
https://www.ccus.jp/ - 国土交通省「建設市場整備:建設技能者の能力評価制度」
制度概要、ガイドライン、能力評価実施団体一覧
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000040.html - 能力評価実施団体一覧(国土交通省HP内)
各職種の具体的な評価基準や申請先はこちらで確認
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/nouryokuhyouka_otoiawase.html
用語集
技能者登録(詳細型)本人確認書類に加え、資格証や顔写真などを登録する方法。能力評価を受けるためにはこの形式での登録が必須。登録基幹技能者熟練技能者の中でも、現場のマネジメント能力に優れた者を認定する民間資格。レベル4(ゴールドカード)の必須要件となることが多い。能力評価実施団体各職種の専門団体(〇〇工事業協会など)で、国土交通大臣の認定を受けてレベル判定を行う機関。
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